管理人のイエイリです。
国土交通省が2021年3月26日に正式リリースした3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU」のウェブサイトをご覧になった方は、その取り組みがこれまでの国交省プロジェクトとはちょっと違うことに気付くでしょう。
同じ国交省の花形施策でも、「i-Construction」は次々と発表される基準類や事例などが、堅めなテイストで発表されるのに対し、「PLATEAU」は何かとオシャレに演出されているのです。
例えば、「PLATEAU」サイトのトップページやロゴから、インタビューに登場する人のファッションやハッカソンなどのイベント、そして無料公開されたマニュアル集の表紙や中身のレイアウトまで、オシャレ感が漂っています。
いったい、なぜPLATEAUはオシャレなのか、その秘密を“中の人”である国土交通省都市局都市政策課課長補佐の内山裕弥さんにオンライン取材を試みました。
PLATEAUのあらゆる面がオシャレなのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
アートディレクション
の専門会社として、アブストラクトエンジン内のパノラマティクスがプロジェクトに参加していたからなのです。
その理由について内山さんは「せっかく、よいデータを整備しても、知名度が低いために利用率が低いと意味がないからです」と説明しました。
たしかに、PLATEAUでは3D都市モデルを使ったプロジェクトが建設分野だけでなく、物流や商業、マーケティング、防災など約40件も実施され、その活用事例が「ユースケース」として発表されています。データが幅広く活用されてこそ価値があるので、強力な広報戦略も導入したというわけでした。
ちなみに、内山さんは技術的、専門的な話もスラスラと説明してくれるので、エンジニアかと思いきや哲学科出身の事務屋さんだそうです。しかし、個人の趣味としてモーション付きの映像などを作っているとのこと。そのセンスが、PLATEAUにも生かされています。
オシャレの謎が解けたところで、せっかくなので気になっていることをいろいろと聞いてみました。
海外にはあの有名な“バーチャル・シンガポール”など、都市を丸ごと3Dモデル化したプロジェクトがいろいろとあります。そのうち、最も参考にしたプロジェクトは、フィンランドの首都、ヘルシンキの都市モデルだそうです。
その理由としては、“都市のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)”のように、3D形状と属性情報を合わせて表現する「CityGML」というデータ形式を導入していることや、都市モデル活用に対する考え方が国交省と近かったことがあります。
続いて、気になっていたのはデータの整備コストです。2016年1月29日付けの当ブログ記事では、あのバーチャル・シンガポールの予算が7300万シンガポールドル(当時のレートで約60億円)と報じています。
一方、PLATEAUはいうと、56都市ものモデルを作成したにもかかわらず、データ整備はこの数分の1と
非常に低コスト
で行うことができました。
その理由は、都市モデルのもとデータとなったのは、全国の各自治体が持っている縮尺2500分の1の「都市計画基本図」をかき集めて作ったからです。国交省だからこそできた作成手法と言えるでしょう。
それから、3D都市モデルの詳細度が自治体ごとに違っていることです。東京駅付近などは建物の屋根を含めた外形やテクスチャーが付いた詳細度「LOD2」のモデルなのに対し、大阪駅前などは詳細度「LOD1」のシンプルな箱形の建物が並んでいます。
実は国交省としては、他にもLOD2のモデルを作るように提案した自治体はあったそうですが、データのメンテナンスに手間ひまがかかるなどの理由で、シンプルなモデルを選んだところが少なくなかったそうです。「これも首都圏優遇か」と内心思っていた私には、意外な回答でした。
最後に、PLATEAUが正式にオープンし、東京23区のデータがダウンロードできるようになった後の反響についてですが、データを収めた「G空間情報センター」サーバーがパンク寸前になるほどだったそうです。
「都市の3D形状だけを収録したFBX形式のダウンロードが多いですね。しかし、FBXは“オマケ”として用意してあるもの。本当は属性情報が付いたCityGMLの方をもっと活用してほしいです」と内山さんは語りました。
PLATEAUの都市モデルは、属性情報を活用してこそ様々な価値を生むものです。今後も都市モデルを使って短時間で作品を作るハッカソンなどのイベントも行っていく予定だそうです。