大東建託が周辺点群、BIM、ARで施工管理! 人間の“超人化”で検査時間を56%削減
2021年6月25日

管理人のイエイリです。

建物の新築工事で最初に気を付けるべきことは、敷地内で建物の位置や向きをしっかり確認することです。特に建物の土台となる基礎の位置などを間違えると、後で大変なことになってしまいますね。

大東建託ではこれまで、建物を建設する前に、図面をもとに建物の配置や躯体、設備配管などを施工する位置を、2~3人でじっくりとチェックを行っていました。

さらに着工後も完成までの各工程で、多数の二重チェックを行っていたため、多くの時間がかかり、人的作業によるヒューマンエラーの心配もありました。

こうしたチェックの手間を軽減しようと、同社はタブレットやスマートフォンを現場でのぞけば、完成後の建物の位置がひと目でわかるAR(拡張現実)技術を使った施工管理システムを、イクシス(本社:神奈川県川崎市)と共同開発しました。

タブレットを通して現場を見れば、どこに建物が建つのかが、ひと目でわかる(以下の写真、資料:大東建託)

これまでも、ARやMR(複合現実)で完成後の建物イメージを現地で見られるシステムがありましたが、今回のシステムは精度が違います。

現場と設計のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルの位置合わせを行うのに、

ナ、ナ、ナ、ナント、

3Dレーザースキャナー

で計測した「周辺点群」を使っているのです。

イクシスによると、現場周辺の点群とARで施工管理を行うシステムは「業界初」です。(大東建託のプレスリリースはこちら

3Dレーザースキャナーで現場周辺の点群を計測する作業

これまでは、基礎などの建設に先立って行う墨出し作業が設計通りに行われているのかを確認する際に、墨出しの点ごとに、図面と現場を何度も照合して確認する必要がありました。

それがARを使うことで、複数の墨出し点の位置が建物各部とズレていないかを、ひと目で確認できるようになるのです。

座標の数字だけに頼ったチェックだと、数値を読み違えるようなヒューマンエラーも起こりがちですが、ビジュアルに全体を確認できるARだと、こうしたミスも防ぎやすくなります。

今後は、点群データとBIMモデルの位置補正をARクラウドで自動的に行えるようにして、誤差を極めて小さくするほか、着工後に鉄筋や金物などの施工不備があった場合にエラー表示するシステムも開発していきます。

ARクラウドと連携したシステムは、2022年度中の導入を目指しています。

今後は着工後の建物各部とBIMモデルを比較できるシステムも開発していく

建物内部や地下のBIMモデルと現場を重ねて表示した例。埋設管の位置などが確認できる

上棟時の画面イメージ。開口の位置や間柱、金物の正確な配置が骨組みに重ねて表示される

基礎配筋の確認イメージ。鉄筋の配筋ピッチや径、スリーブの位置などが現場に合わせて表示される

●このシステムで確認や調査が可能なもの

(1) 建物の配置
(2) 基礎配筋、スリーブの位置、種類
(3) アンカーボルトの位置
(4) 配管の位置、種類、ルート
(5) 壁・間柱・金物の位置
(6) 開口・下地の位置
(7) 外壁サイディングの張り分け

ARは人間の視覚とデジタルデータを重ねて見るという、極めて人間的な技術です。言い換えると、人間の能力を“超人化”するシステムという見方もできます。

その効果ですが、このシステムをすべての現場で導入した場合、建物配置や配筋、上棟時の検査にかかる時間は、従来と比較して

56%も削減

できる見込みです。

最近は、iPhoneやiPadを使って現場を高精度の点群データにしたり(2020年10月23日の当ブログ記事などを参照)、GNSSを使って公共座標系の点群データを計測したり(2021年6月16日の当ブログ記事などを参照)と、現場での点群計測は技術革新が続いています。

現場周辺の点群データに、施工後の建物や水道管やガス管、埋設電線などの点群データを合わせて保存しておくと、将来のリニューアル工事などに大いに役立ちそうです。

また、道路工事などで地下を掘削した際のライフラインの点群データを、iPhoneやiPadと公共座標系で計測し、みんなで統合すると点群版のライフライン台帳ができそうですね。

そうなると、試掘せずに一発で配管を掘り当てられると---夢は広がっていく一方です。

(Visited 1 times, 1 visits today)

Translate »