Civil 3Dの“裏ワザ”で砂防ダムを位置決め! Generative Design機能を活用
2021年9月10日

管理人のイエイリです。

山間部で土石流を食い止める砂防ダムを設計するとき、ベストな建設地点を選ぶのは気が遠くなるような作業が必要です。

例えば、下のような谷地形があったとき、建設候補の場所は無数にあります。建設位置が変わると、上流から流れ込んでくる土砂や流木の「流出量」が変わり、堤高が変わると砂防ダムが食い止める土石流の量も変わります。

最もコストパフォーマンスの高い設計にするには、場所と堤高などの組み合わせを無数に変えて計算し、その中から最適な結果を選ばないといけないのです。

砂防ダムの建設候補地点は無数にある(以下の資料:オートデスク)

砂防ダムに求められる条件。上流からの流出土砂量より、せき止められる量を少しだけ大きくする

この膨大な計算を瞬時に行い、最適解を見つける方法が、オートデスクのCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)ソフト「Civil 3D」の“裏ワザ”として開発されました。

同社のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」に搭載されている「ジェネレーティブ・デザイン(Generative
Design)」という機能を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

Civil 3Dに移植

して自動計算を行うというものなのです。

ジェネレーティブ・デザインの概念図。DynamoはアルゴリズムでRevitをコントロールするソフトだが、Generative DesignはさらにRevitを自動運転して無数の結果を出し、その中からベストなものを選ぶ

ジェネレーティブ・デザインとは、ソフトに設計のゴールや制約などの条件を与えて、無数の試行錯誤計算を行い、最も優秀な結果を設計者が選ぶというBIM/CIM時代の設計法です。

ジェネレーティブデザインの機能をRevitからCivil 3Dに移植したのは、この繰り返し計算を自動的に行わせるためです。ただ、この裏ワザは、オートデスクが公式サポートしているものではありませんので、試す場合は自己責任でお願いします。

その手順を説明した動画「Civil 3D Generative Design (砂防堰堤の配置検討)」が、オートデスクの「BIM design」というウェブサイトに掲載されているので、ポイントを見てみましょう。

Civil 3D Generative Design (砂防堰堤の配置検討) | BIM Design 土木・インフラ向けサイト

まずは砂防ダム(堰堤)の最適配置を決めるロジックを、フローチャートで整理します。そして、そのロジックを、Dynamoのプログラムとしてグラフィカルに記述します。

砂防ダムの最適配置を決めるロジック

Dynamo上にプログラムとして再現されたロジック

そして500メートルほどの区間を建設地点として設定するとともに、建設コストを少なくするため堤高・堤長・断面積を最小化するという目標を設定します。

設計目標や制約条件の設定画面

プログラムを走らせると、DynamoがCivil 3DやExcelの表に書かれた計画流出土砂量などのデータをあちこちから拾ってきて、建設地点を様々に変えながら自動計算を行い、結果を表示します。

建設地点を変えて、無数の計算を行って出された結果

最後に人間が最適と評価したものを選ぶ

ここに表示された結果は、無数に行った計算の中でも選び抜かれたものですが、最後に

人間が最終決定

を行い、建設地点を決めます。

Civil 3D上で最適な建設地点に配置された砂防ダム

このプログラムは、アサヒコンサルタント(本社:鳥取市)の若手土木技術者、宮内芳維氏が発案し、キタック(本社:新潟市中央区)がワークフローの作成、そしてオートデスク(本社:東京都中央区)がプログラムの作成を担当しました。

Generative Designによる砂防堰堤設計システムの開発にかかわった人々

以前から、繰り返し計算を行って最適解を選ぶ方法はありましたが、変数の刻み幅や計算に必要なデータの数値などを自分自身でプログラムに組み込むなど、手軽に行える方法ではありませんでした。

その点、ジェネレーティブ・デザインのソフトを使うと、設計の目標や制約を人間が指示するだけで、あとはプログラムが自動的に結果を出してくれます。

まさに、AI(人工知能)とBIM/CIMの組み合わせによるDX(デジタル・トランスフォーメーション)と言っても過言ではありませんね。

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