管理人のイエイリです。
和歌山県白浜町にある南紀白浜空港は以前、年間3億円を超える赤字を抱えていたそうですが、2018年に南紀白浜エアポート(本社:和歌山県白浜町)が県から運営を引き継ぎ、様々な施策を行っています。
維持管理の革新も取り組みの一つです。
同社は2020年3月~12月、日本電気(NEC)と共同で、ドライブレコーダーを用いた道路劣化AI(人工知能)診断サービス「くるみえ for Cities」を使い、滑走路調査・点検の実証実験を行いました。
ドライブレコーダーの映像をAIで分析することで、滑走路面のひび割れを検知するとともに、ドラレコに内蔵された加速度センサーから路面の平たん性を把握し、異常や劣化のある箇所を地図上に表示するものです。
これまでの目視点検に代えて、市販のドラレコとAIを組み合わせた点検手法は、インフラ維持管理の世界で高く評価され、2021年度の「第5回 インフラメンテナンス大賞」のメンテナンス実施現場における工夫部門で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
国土交通大臣賞
を受賞するという栄誉に輝いたのです。(国土交通省のプレスリリースはこちら)
南紀白浜エアポートの維持管理業務の革新は、これだけではありません。同11月11日に、南紀白浜エアポートとNECは、衛星合成開口レーダーを活用したインフラモニタリング技術の実証実験を行う覚書を締結しました。(NECのプレスリリースはこちら)
衛星合成開口レーダーで空港や周辺エリアの地盤面を観測し、時系列的に比較することで地盤沈下や空港周辺の建物や樹木などの障害物を検知するのが目的です。
さらに、このほど同空港の管理に“新兵器”が投入されました。それは、
長距離3D-LiDAR
です。(NEC、南紀白浜エアポートのプレスリリースはこちら)
長距離3D-LiDARは、レーザー光を照射して物体からの反射光を捉えて、距離を測定する技術です。通常のLiDARは検知能力が200m前後しかありませんが、最長で1kmという長距離の検知が可能です。
さらにNECの長距離・大容量光送受信技術と3D点群データ解析技術を組み合わせることで、夜間でも異物の発見が可能です。
両社は長距離3D-LiDARを使った異物検知の実証実験を、2022年4月から実施します。今後は、空港周辺の空間に高さ制限を超える障害物がないかどうかを確認する「制限表面の監視」にも、長距離3D-LiDARを活用する予定です。
ちなみに、南紀白浜エアポートの代表取締役社長を務める岡田信一郎さんは、京都大学工学部交通土木工学科・大学院の出身で、日本道路公団を経て米国コロンビア大学ビジネススクールを修了。その後、新関西国際空港会社の執行役員として、関空の再建にもかかわった人です。
土木屋さんとしての知識・経験をベースに、革新的な経営感覚を兼ね備えた岡田さんが率いる、南紀白浜エアポートの維持管理への取り組みには、これからも大いに注目していきたいですね。