管理人のイエイリです。
建築現場でのロボット活用や施工管理の自動化などで欠かせないのは、建設中のビル内での現在位置を計測する技術です。
屋外のようにGNSS(全地球測位システム)の電波が届かないので、これまではビーコンやQRコード、センサーなどで工夫してきましたが、手間ひまがかかっていました。
こうしたビル内での位置計測の問題を解決するため、日本電気通信システム(NEC通信システム)は、竹中工務店やアルモ(本社:香川県高松市)、MetCom(本社:東京都中央区)の協力のもと、スマートフォンで高精度な3次元位置を求める実験に成功しました。
現在いるビルの階数を正確に計測する決め手として使ったのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
気圧データ
だったのです。(NEC通信システムのプレスリリースはこちら)
使用したのは、MetComが2022年10月から関東や大阪の一部で商用サービスを開始したMBS垂直測位サービス「Pinnacle」です。
街中のところどころに、MBS(Metropolitan Beacon System)の基地局を設け、ここからGNSS衛星と同様な電波を発信し、水平方向の位置情報とともに、気圧の情報も発信するのです。
今回の実験では、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルの位置を、建物の緯度、経度、高度に合わせて変換し、「Pinnacle」によって得られるリアルタイムの高さ情報をもとにして、自己位置を表示するスマホアプリを試作し、位置計測を行いました。
その結果、実際の建築現場内でも十分な精度での位置計測ができることが確認できました。MetComによると2~3mの精度で高度を特定することができるそうです。
GNSSの電波は、約2万km離れたはるかかなたの宇宙から送られてくるのに対し、MBSの電波は都市内から送られてくるので、電波の受信強度は
GNSSの約10万倍
となります。
その結果、建物の中や地下でも電波が届き、GNSSと同じ方式で位置計測が行えるのです。
MetComはPinnacleのネットワークを急速に整備しており、2022年度は東京・大阪・名古屋でサービスを開始し、2023年度にはさらに政令都市にもサービスを広げていく予定です。
今回の実験では、水平方向の位置はGNSSを使用しましたが、今後、MBSを使うようになれば、より安定した位置計測が可能になりそうです。
NEC通信システムでは気圧測定と通信の機能に絞った小型ハードウエアを開発し、モノに張り付けて継続的に位置把握と集中管理を行うクラウドシステムの開発も予定しています。
MBSやPinnacleのサービスは、これまで屋内や地下での位置測定に頭を悩ませていた建設業のDX推進者にとって、大きな助っ人となりそうです。