管理人のイエイリです。
高架橋やトンネルなどの土木インフラの定期点検と言えば、紙の調査用紙を用意し、それに書き込んだり、カメラで写真を撮ったりするのが一般的なスタイルです。
紙がタブレットに変わっても、点検結果の入力はタッチペンなどでの手書きやプルダウン選択するものが多く、両手で様々なことを行わなければいけません。
首都高技術(本社:東京都港区)は、2022年4月から首都高速道路の構造物点検に新しい点検システムを導入し、従来の点検スタイルにちょっとしたDX(デジタル・トランスフォーメーション)をもたらしました。
これまで手で入力していた点検結果データを、
ナ、ナ、ナ、ナント、
声に出して音声入力
できるようにしたのです。(アドバンスト・メディアのプレスリリースはこちら)
このシステムは、「音声入力による点検結果報告書システム」というもので、首都高技術、長岡工業高等専門学校(所在地:新潟県長岡市)環境都市工学科長の井林康教授、アドバンスト・メディア(本社:東京都豊島区)の3者が共同開発しました。
首都高技術では、構造物の老朽化による損傷箇所の増加によって、点検業務の負担が増えることが課題になっていました。
そこで2018年度から、アドバンスト・メディアのAI音声認識技術「AmiVoice」と、長岡高専が研究開発していた音声入力対応の点検システムを組み合わせて、このシステムの開発を進めてきました。
さらに実際の点検現場での試行導入や、点検員へのヒアリングを行ってシステムの改良を続けてきました。
紙の記入用紙の代わりにタブレットを利用することで、「紙」を使わない点検を実現しました。
その結果、手書きで発生していた記入漏れの防止や、作業後のデータ入力作業時間が削減されました。

システム全体の概念図。前回の点検結果や調査用紙は「点検データベース(DB)」からクラウド経由でタブレットに取り込まれ、点検結果はクラウドにそのままアップロードされるので、紙を印刷したり再入力したりする手間がかからない
首都高技術では、首都高速道路の全路線を毎年2回ずつ、高架下からの遠望目視で点検しています。
音声入力によって、業務の効率化や高度化、報告書の品質向上が可能になり、今後は、
約20%の作業時間短縮
を見込んでいます。
3者はこのシステムの関連技術について、特許を共同出願したほか、他のインフラ構造物の点検業務にも活用を広げるため、新しいソリューションや顧客サービスの提供を行っていく方針です。
アドバンスト・メディアは、これまで、建設業などの専門用語を音声認識し、議事録を自動作成するシステムなどを開発してきました。
紙に書いたり、入力装置を操作したりするのは「手」が主流でしたが、これからは両手がふさがったままでも使える「音声」が、有力な入力手段として活用されそうですね。