管理人のイエイリです。
西松建設は、山岳トンネル工事で落石や落盤などで、最も危険な切羽(きりは:掘削最前面)での作業を無人化するため、遠隔操作や自動化の技術を組み合わせた山岳トンネル無人化施工システム「Tunnel RemOS(トンネルリモス)」の開発を進めています。
当ブログで紹介しただけでも、「切羽の遠隔監視」(2021年5月26日の記事参照)、「ホイールローダーの遠隔操作」(2021年10月11日の記事参照)、「掘削した地山性状の3Dモデル化」(2022年2月3日の記事参照)、「自由断面掘削機の遠隔操作」(2022年3月18日の記事参照)などがあり、同社の無人化に対する意気込みがひしひしと感じられます。
そして同社はこのほど、ジオマシンエンジニアリング(本社:東京都荒川区)と共同で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
油圧ショベルを遠隔操作
し、切羽付近の作業を無人化できる「Tunnel RemOS-Excavator(トンネルリモスエクスカベーター)」を開発したのです。(西松建設のプレスリリースはこちら)
山岳トンネル工事では、切羽を発破した後に、浮き出ている岩片や浮き石を、ブレーカーで落下させる「コソク作業」が行われます。
これまではオペレーターが乗った油圧ショベルが切羽に接近し、この作業を行っていました。しかし飛び石や切羽の崩落などの危険や、振動、騒音、粉じんなどがあり、苦渋環境での作業でした。
この作業を遠隔化したことにより、作業が安全になるのはもちろんのこと、オペレーターは空調完備の快適な室内で同じ作業を行えるようになったのです。
油圧ショベルには、遠隔操作室からの操作信号によって機体を制御する機体制御盤や、ショベルの周囲や切羽を映すための複数のフルHD カメラを搭載しています。
遠隔操作室には、走行や打撃のためのペダルや油圧ブレーカーのブーム、アームの動作、機体の旋回等を行うためのレバーを備えたコクピットがあります。
各種映像を映すためのモニターが設置されており、切羽近くの映像や音、振動を体感しながら実機に近い感覚で油圧ブレーカーを遠隔操作できます。
もう一つ、コソク作業を行う上で、重要なのは掘削した断面が設計断面をクリアしているかを判定することです。万一、地山が設計断面より内側に出ていると、後々、手戻りにつながりますからね。
そこで、この油圧ショベルには
高速3Dスキャナー
が搭載されており、掘削形状の点群データと設計断面を比較して、設計断面より内側にある部分をリアルタイムで「ヒートマップ表示」する「切羽掘削形状モニタリングシステム」が搭載されているのです。
以前、両社が開発した切羽の遠隔監視システム「Tunnel RemOS-Meas.(トンネルリモスメジャー)」を小型化して、油圧ショベルに搭載できるようにしたわけですね。きっと、使い勝手も格段に向上したでしょう。
この遠隔操作システムは、重機メーカーを問わず、後付けが可能です。
西松建設は鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局発注の「北海道新幹線、磐石トンネル(北)他工事」の現場で実証試験を行った結果、施工に影響を及ぼす通信上の不具合は生じず、油圧ブレーカーによる一連の作業を無線で遠隔操作可能であることを確認しました。
西松建設では「Tunnel RemOS」を構成する各技術の実証試験を、2023年度までに完了する予定で、2027年度までの実用化を目指しています。
「経験工学の代表的工種だった山岳トンネル工事ですが、“無人化施工元年”の到来が日に日に近づいているようです。