管理人のイエイリです。
福島県南相馬市にある「福島ロボットテストフィールド」(運営:福島イノベーション・コースト構想)には、ドローン(無人機)やロボットによる点検技術を開発・検証するために、橋やトンネルなどのほか、化学工場などを模した試験用プラントも設けられています。
このほど、ボールウェーブ(本社:宮城県仙台市)は、JDRONE(本社:東京都新宿区)のドローンを使って、この試験用プラントである実証実験を行いました。
上の写真を見ると、ドローンからは長い棒のようなものが突き出しているのがわかります。
いったい、何をやっているのかというと、煙突から排出されるガスの成分を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ガスクロマトグラフ
という分析装置で調べていたのです。(ボールウェーブのプレスリリースはこちら)
長い棒状のものは、ドローンの強いプロペラ後流に乱されることなく、煙突から排出されるガスを収集するために搭載されたもので、長さ3mのCFRP(炭素繊維複合樹脂)管のサンプリング機構です。
ガスクロマトグラフとは、中空の管をリールに巻いた「カラム」という流路に混合ガスを通すことによって、多種類のガスを分離し、種類や濃度を測定する分析装置です。
通常は卓上に設置する大型の装置ですが、今回は通常30mのカラムを10mに短縮し、短時間に分析が行える重さわずか1.2kgの超小型ガスクロマトグラフを開発し、ドローンに搭載しました。
実験では煙突から放出される試験用ガスを、ドローンで30秒間集めて分析しました。その結果、石油を燃焼するプラントで観測されるヘプタン(C7)、オクタン(C8)、ノナン(C9)を捕集時間込みで、わずか3分間で検出に成功したのです。
煙突から排出されるガスを収集、分析した結果。ガスの捕集時間を含め、わずか
3分間で検出に成功
したのです。
また、正常運転しているプラントでは発生しない、プロピレングリコール(P)というガスが、1ppmv以下の濃度で含まれていることもわかりました。ノナン(C9)の平均濃度17ppmvに比べると、微量にもかかわらず、分析できました。
超小型ガスクロマトグラフを開発したボールウェーブは、東北大学で開発された「ボールSAWセンサー」を用いて、微量の水分や多種類のガスを高速・高感度にセンシングする技術を持った大学発ベンチャーです。
ドローンと化学分野のセンサーが合体するとは、「新結合によるイノベーション」と言っても過言ではありません。
地すべりや土石流が発生する前には、「土のにおいがした」という前兆現象も報告されています。これまで人間の「五感」(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち、ドローンは「視覚」以外はあまり使われてきませんでしたが、各種センサーとの合体で、他の感覚も実装できるようになるのでしょうか。
経験豊富な技術者のように、「現場のにおいをかいで、異常を見つける」ということが、ドローンでも可能になるわけですね。