管理人のイエイリです。
橋梁の工事で大変なのは、橋桁の床版に設置された配筋の検査です。これまでは床版全面をメジャーやスケールを持って移動しながら、鉄筋の径や本数間隔、継手長を一つ一つ計測しながら、写真を撮っていました。
配筋検査となると、作業者だけでなく、発注者の立会人も必要なので、多くの人員を要します。人手不足の建設業としては、このままの検査方法を続けていくのはもはや困難です。
そこで、東京大学発のスタートアップ企業、ACES(本社:東京都文京区)とJFEエンジニアリングは、配筋検査が大幅に楽になる「自動配筋検査AIシステム」を開発しました。
第一の特長は、これまで床版上で撮影していた、膨大な数の床版配筋を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ドローンで全数撮影
し、大きな写真にまとめることです。(ACESのプレスリリースはこちら)
撮影した配筋写真は、真上から見下ろしたオルソ画像のように橋梁幅全体をカバーし、橋軸方向は約12mの巨大写真にまとめます。
まさに写真による配筋の「デジタルツイン(デジタルの双子)」として、現場の状況を記録できるわけですね。
これなら、膨大な数の写真を一つ一つ、図面と照らし合わせながら見るよりも、直感的かつスピーディーに施工状況が確認できそうです。
配筋の撮影には、単眼カメラを使っています。
そして、二つ目の特長は、配筋写真から
AIがすべて鉄筋ピッチ
を自動的に算出し、帳票も自動作成してくれることです。
このシステムは2022年11月末に、R3東関道武田川橋上部工事(発注者:国土交通省 常総国道事務所)の現場で試行し、検証されました。
このシステムにより、配筋検査を自動化、省人化できるとともに、発注者の立会検査を遠隔臨場化することも可能になりそうですね。
ACESは、東京大学で人工知能の研究を行っている、あのAIの権威、松尾豊教授の研究室から生まれ、2017年に設立されたAIスタートスタートアップ企業です。
松尾教授と言えば、最近、人間のような文章を自動作成することで話題になっている「ChatGPT」について、その活用方法や日本の戦略について、「AIの進化と日本の戦略」という資料がわかりやすいと評判になっています(ITmediaの記事より)。
ChatGPTの登場をきっかけに、建設の仕事を楽にしてくれるAIが、これからも続々と出てきそうな気配を感じますね。