山岳トンネルの切羽に爆薬をホース圧送! アクティオと大成建設が自動装薬装置を開発
2023年4月11日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事と言えば、ドリルで岩盤に穴を開け、爆薬で発破しながら掘り進む工法が中心で、かつては危険に満ちていました。

しかし、最近は各社が作業の機械化や自動化の技術開発にしのぎを削っており、数年後には無人施工も可能になりそうな勢いです。

そんな中、建機レンタル会社のアクティオ(本社:東京都中央区)は、大成建設と共同で、山岳トンネル工事の安全性を高める装置「T-クイックショット」を開発しました。

「T-クイックショット」を使った山岳トンネル掘削作業のイメージ(左)と作業員が持つリモコン(右)(特記以外の写真、資料:アクティオ、大成建設)

「T-クイックショット」を使った山岳トンネル掘削作業のイメージ(左)と作業員が持つリモコン(右)(特記以外の写真、資料:アクティオ、大成建設)

上の写真は、その作業風景ですが、作業員が掘削最前面の「切羽(きりは)」になんやらホースにつながれたパイプを差し込んで、リモコンを操作しています。

ホースは一体、何のためにあるのかというと、

ナ、ナ、ナ、ナント、

爆薬の貯蔵ホッパー

につながっており、そこから空気圧送されてくるのです。(大成建設のプレスリリースはこちら

ホースのもとは爆薬を貯蔵したホッパーにつながっていた

ホースのもとは爆薬を貯蔵したホッパーにつながっていた

作業員が持つパイプの先には、「親ダイ」と呼ばれる電気雷管付きの爆薬を入れておき、発破用の穴に差し込みます。

そしてリモコンを操作すると、ホッパーから「増しダイ」と呼ばれる追加の爆薬が空気圧送されてきて、親ダイの後に追加装てんされるのです。

親ダイ、増しダイともに、直径30mm、200gの紙巻き含水爆薬を使用しています。

発破後の岩盤や土砂が崩れてくる「肌落ち」などの危険がある切羽から、1.5m程度離れて行えるので、装薬作業を安全かつスピーディーに行えます。

爆薬は潤滑水とともに圧送されてくるので、装薬孔の中でぎっしりと押し付けられるようになり、空隙の少ない密な装てんが行えます。

そのため、増しダイの後方に空隙(くうげき)をふさぐ「込めもの」となる砂や粘土を詰める作業が不要になり、爆薬のエネルギーを岩盤に確実に伝えて効果的な発破が行えます。

装薬孔内にぎっしりと押し付けられた紙巻き含水爆薬の状況

装薬孔内にぎっしりと押し付けられた紙巻き含水爆薬の状況

実際の施工では、削孔作業を行うドリルジャンボのアーム先端に装薬用パイプを取り付け、爆薬のホッパーや空気圧縮機、爆薬の圧送システムなどは、2トントラック1台に、圧送・装薬装置2台をまとめて搭載します。

装置1台につき、爆薬60kg(300本)を格納できるので、一般的なトンネル断面での、1日の爆薬使用量をまかなえます。

ドリルジャンボの先端(左側)では装薬作業が行われ、右側の2tトラックから爆薬が空気圧送されてくる

ドリルジャンボの先端(左側)では装薬作業が行われ、右側の2tトラックから爆薬が空気圧送されてくる

2トントラックの荷台に搭載された爆薬装薬装置の構成

2トントラックの荷台に搭載された爆薬装薬装置の構成

実際の作業風景。写真奥が爆薬を装てんする切羽

実際の作業風景。写真奥が爆薬を装てんする切羽

また、制御用のパソコン画面では、圧縮空気圧や潤滑水の供給状態を常時、モニタリングできるほか、異常発生時には音声と連動した警報装置が作動して、装置が停止する仕組みになっています。

アクティオは、これらの装置の設計、製作と実証実験を行いました。

制御用のパソコン画面。空気圧や潤滑水の供給状態、爆薬の残数などをモニタリングできる

制御用のパソコン画面。空気圧や潤滑水の供給状態、爆薬の残数などをモニタリングできる

異常発生時には音声と連動した警報装置が作動する

異常発生時には音声と連動した警報装置が作動する

一方、大成建設は、この装置を全国の山岳トンネル現場に導入し、機能拡張を行い、将来的には

1人だけで施工

できるように、掘削作業の完全自動化を目指しています。

大成建設が目指す山岳トンネル工事の完全自動化構想。1人だけで施工できるようにする(資料:大成建設)

大成建設が目指す山岳トンネル工事の完全自動化構想。1人だけで施工できるようにする(資料:大成建設)

山岳トンネル工事が、「3K(危険、きつい、汚い)」や「KKD(経験・勘・度胸)」の代表的工種だったのは昔のことで、今や作業の遠隔化や自動化が進んでいます。

今回の「T-クイックショット」は、リモコンのボタン1つで、ついに装薬作業までを自動化した点が画期的と言えるでしょう。

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