管理人のイエイリです。
天空率や斜線制限などを解析する建築設計ソフト「ADS」シリーズなどを開発、販売する生活産業研究所(本社:東京都目黒区)はこのほど、「天空率チャレンジ」というコンテストを開催しました。
第1回の課題は、「角地のある2方向道路」に面した522m2の敷地に対し、容積率や最大高さ、天空率だけを考慮して、最大の容積をとれる建物のボリューム案を競うというものです。
その結果が2023年6月15日に発表されました。第4位の日建設計チーム(体積2万0423m3)と、第5位の中村剛氏(同1万8753.2m3)は、通常の高層ビルのように下から上までが同じ断面の設計でした。(天空率チャレンジの結果はこちらから)
普通は500m2そこそこの敷地で、これだけの体積が取れれば御の字でしょう。しかし、今回のコンテストは建物の実現性は考慮しなくてもよいことになっています。
そこで、第3位の竹中工務店 大阪本店設計部申請グループは
ナ、ナ、ナ、ナント、
“天空の城”
のように、上部が空中に浮かんだ斬新な案によって体積2万3077.56m3を実現したのです。
第3位で天空の城という“禁じ手”が登場したならば、それより上位は気球のような作品ばかりかと思われましたが、第2位のナカガワ@バリカン氏の作品は、ちゃんと地に足が着いた逆振り子のようなデザインで、2万4460.47m3という体積をたたき出しました。
まず、隣地側の制約をクリアしたボリュームを作成した後、道路側に地道にボリュームを加えていった結果、この形が実現したそうです。
そして、これをさらに上回る体積2万5806.55m3を、ぎりぎり“地に足”が着いたデザインで実現し、見事、第1位に輝いたのは日建設計の矢吹和也氏の作品です。
この形状にたどり着くまでに、3Dデザインソフト「Rhinoceros」と「Grasshopper」によって、
遺伝的アルゴリズム
という手法によって最大体積のボリュームを求め、BIMソフト「Archicad」とアドオンソフト「ADS-BT」で天空率の最終確認を行ったそうです。
建物が周囲に落とす影の範囲や大きさの基準として、従来は「斜線制限」が用いられていたため、道路に面した部分が「斜めカット」された建物が多く見られました。
そこで、基準を緩和するために平成14年の建築基準法改正で「天空率」が追加されましたが、3Dによる複雑な検討が必要です。
今回のコンテストを見ると、天空率によって設計の可能性が広がってくることを感じますね。そして天空率を最大限に活用するためには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やアルゴリズミックデザインによる最適化が必要なこともわかります。
生活産業研究所では、2023年6月29日(木)の17時から、今回のコンテストの結果や天空率について解説する無料オンラインセミナー「事例で解説!天空率アドバンスセミナー」を開催します。天空率にご興味のある方は、参加してみてはいかがでしょうか。