管理人のイエイリです。
全館で無線LANが使える建物が当たり前になりつつありますが、Wi-Fiを後付けしたと思われる建物では、各階に無線ルーターや複数のアンテナを設置するなど、過剰な設備になっているケースもあります。
できれば、最小の無線設備で最大のエリアに十分な強度の電波を届けられる設計にしたいところですね。
そこで西日本電信電話(以下、NTT西日本)と竹中工務店は、建物の設計段階で完成後の無線環境を正確かつ効率的に推定できる技術を開発し、実証実験に成功しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
建物のBIMモデル
を使って、Wi-Fi強度のシミュレーションを行えるのです。(NTT西日本のプレスリリースはこちら)
電波強度のシミュレーションには、NTT西日本が開発した無線電波伝搬シミュレーション技術「Cradio」を使用しました。
Cradioでシミュレーションを行うためには、現地で建物の3次元形状を計測して入力する膨大な手間ひまがかかるため、事実上、現場での導入は困難でした。
そこで、竹中工務店は建物のBIMモデルから建物形状データとして「SHP形式」のデータを作成し、NTT西日本がCradioの入力データとして利用することで、より簡単に室内の無線環境を正確に推定できるようになったのです。
この実証実験は、2023年12月7日~2024年3月29日の間、大阪市北区にある研究施設、コモングラウンド・リビングラボの2室(234.9m2)を使って行われました。
推定値と実測値の誤差は5dB未満となり、無線基地局の設置設計に使われる一般的な基準8dBをクリアしており、実験は成功でした。
シミュレーションによる設計時間は、従来方式に比べて設計・確認時間が30%削減されたほか、無線用の
設備数は50%も削減
され、従来に比べて半分の基地局数で十分な通信環境が構築できることが確認できました。
両社は今後、2024年度により大きな建物で活用検証を行い、2025年度に実際の建物に導入できるよう、ソリューションの確立を目指します。
建物内の無線通信インフラは、メールやウェブサイト、SNSといったWi-Fiによる通信はもちろん、今後はロボットなどをリアルタイムに操作するための5Gや、その次の通信技術である「Beyond 5G」など、重要性は増すばかりです。
建設業界としては、無線通信インフラをどこでも提供していくための技術やノウハウが求められていきそうですね。