管理人のイエイリです。
地球の温暖化や気象の激甚化に伴い、都市のヒートアイランド対策や土砂災害対策は、地方自治体などにとって、ますます重要な課題になりつつあります。
これらの対策には、広大な都市エリアを対象にしたコンピューターシミュレーションが欠かせません。しかし、これまでは、都市の3Dモデル作成や解析条件の設定や、結果の見える化には高度な専門知識をもったエンジニアでないと行えませんでした。
そこで構造計画研究所(本社:東京都中野区)は、国土交通省が主導する日本の3D都市モデル活用プロジェクト「Project PLATEAU」に参画し、ヒートアイランド対策や土砂災害対策のシミュレーションを、“カンタン化”することに取り組んでいます。
その一つは、神奈川県横須賀市を対象としたヒートアイランド対策用の大規模シミュレーションです。
シミュレーションの条件構築や実行、結果の可視化までの一連の熱流体解析(CFD)に関する業務のほとんどを、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ノンエンジニアが自ら
行えるようにしたのです。(構造計画研究所のプレスリリースはこちら)
このシステムは、東京工業大学の稲垣厚至助教の監修を受け、オープンソースのCFDソフトウェア「OpenFOAM」を利用して開発しました。
Webアプリ上でグラフィカルに操作しながら、シミュレーション要件や現況調査に基づく解析条件を容易に設定できます。
また、シミュレーションの結果、得られた各地点の風向や温度、暑さ指数は、Webアプリ内で3D描画することができ、さらには住民などの一般ユーザーを対象に、シミュレーション結果の公開機能も備えています。
このシステムは、横須賀市都市計画課の職員に実際に操作してもらい、予測システムとしての実用性や使用感などをヒアリングしました。その結果、大半の参加者から好感触な評価をえられたとのことです。(ヒートアイランド解析の詳細は、PLATEAUのウェブサイトで)
構造計画研究所はこのほか、岡山県備前市を対象にPLATEAUを使った精緻な土砂災害シミュレーションシステムを、建設コンサルタントのウエスコ(本社:岡山市北区)と共同で開発しました。
土石流などが家屋に衝突することで、エネルギーや流動方向が変化する状況を再現するため、
家屋の倒壊も考慮
できるようにしたのです。
土石流の解析には、氾濫や流出、津波、土石流モデルなどの数値シミュレーションが行えるフリーソフト「iRIC」を利用し、解析ソルバーには「Morpho2DH」をカスタマイズしました。
このカスタマイズには、Morpho2DHの開発者である京都大学の竹林洋史准教授、広島大学の三浦弘之教授の監修により、3D都市モデルの読み込み機能や、家屋倒壊判定機能を追加実装しました。
さらに解析の結果、得られた土石流の氾濫範囲や氾濫速度、家屋損壊の状況を、土木や工学の専門知識を持たないユーザーが直感的に理解できるようにするため、3D可視化プラットフォームとして「Terria Map」を採用し、Web上で解析結果をアニメーション表示できるようにしました。(土石流シミュレーションの詳細は、PLATEAUのウェブサイトで)
PLATEAUの3D都市モデルは、属性情報付きなのが便利ですが、データが巨大なだけにダウンロードや解析のための切り出しだけでも大変な作業が必要でした。
構造計画研究所は今回の成果を、避難計画の高度化や、都市計画、環境政策の合理的根拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence Based Policy
Making)の推進に活用していく方針です。
Webアプリ上で巨大なPLATEAUデータから必要な部分を切り出し、シミュレーション設定や結果の可視化を簡単に行えるようになると、各地の地方自治体が自ら様々な課題を解決しやすくなりますね。