鹿島が研究所の周囲に“堤防”を建設! 多摩川の水害シミュレーションをもとに対策工事
2023年7月11日

管理人のイエイリです。

鹿島建設の鹿島技術研究所(所在地:東京都調布市)には、京王線飛田給駅近くの本館のほか、南東約1.2kmに西調布実験場があります。

西調布実験場は多摩川に近くにあり、国土交通省の水害ハザードマップ「浸水ナビ」によると計画規模降雨時の最大浸水深は49cmと推定されています。

しかし、最近の洪水は激甚化しているため、将来的な降雨量の増大も勘案して洪水氾濫解析を行うと、余裕をみて1.5mの浸水深を覚悟した方がよさそうです。

国土交通省の水害ハザードマップでは、最大浸水深は49cmと推定された(以下の資料、写真:鹿島)

国土交通省の水害ハザードマップでは、最大浸水深は49cmと推定された(以下の資料、写真:鹿島)

将来の降雨量増大を考慮して洪水氾濫解析を行った結果。余裕をみて最大浸水深は1.5mを覚悟した方がよさそうだ

将来の降雨量増大を考慮して洪水氾濫解析を行った結果。余裕をみて最大浸水深は1.5mを覚悟した方がよさそうだ

一方、同実験場には複数の建物が建っており、どの棟にも高価な実験機器があるため、浸水による被害が心配されていました。

そこで鹿島は、実験場の敷地全体を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

止水壁で囲む

工事を行うことにしたのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

西調布実験場の敷地外周を「止水ライン」として止水壁で囲むことにした

西調布実験場の敷地外周を「止水ライン」として止水壁で囲むことにした

つまり、実験場の周囲に“陸地内堤防”を築き、周囲が浸水しても大丈夫にしようというわけですね。この工事は2023年9月に着工し、2024年10月に完了する予定です。

そこで敷地の外周に鉄筋コンクリート(RC)造と、圧迫感を和らげるために一部ガラススクリーン製の止水壁を設けることにしました。

普段、出入り口として使っている部分には、浸水が発生すると自動的に立ち上がる起伏式止水板を配置します。

止水板が立ち上がった後、出入りに支障があると外部から孤立してしまうので、止水壁の一部に階段を設けて乗り越えられるようにします。

圧迫感を和らげるガラススクリーン止水壁(左)と浸水時も出入りできる階段付き止水壁(右)

圧迫感を和らげるガラススクリーン止水壁(左)と浸水時も出入りできる階段付き止水壁(右)

しかし、地表を止水壁で囲んでも、地下の排水管から水が入ってくると意味がありません。

そこで、排水管の逆流を逆止弁と仕切弁によって防ぐ

二重逆流防止弁

を取り付けて、“完全防水”を実現したのです。

鹿島技術研究所 西調布実験場で行われる様々な水害対策。「水災害トータルエンジニアリングサービス」によって、予測、予防、対応を行う

鹿島技術研究所 西調布実験場で行われる様々な水害対策。「水災害トータルエンジニアリングサービス」によって、予測、予防、対応を行う

河川の増水や台風接近時に、これらの設備を実際に運用するため、「行動タイムライン(防災行動計画)」を作成し、人員配置の計画が行えるようにしました。

対策工事が完了した後は、この行動タイムラインをBCP(事業継続計画)訓練などの際に見直し、より実効性の高いものにレベルアップしていく予定です。

台風襲来時の「行動タイムライン」(左)と、今後の見直しによるレベルアップ計画(右)

台風襲来時の「行動タイムライン」(左)と、今後の見直しによるレベルアップ計画(右)

鹿島は2022年10月に「水災害トータルエンジニアリングサービス」の提供を開始しました。(鹿島のプレスリリースはこちら

今回の対策工事は、このサービスの「予測」「予防」「対応」を自社施設で活用し、実施するものです。

「水災害トータルエンジニアリングサービス」のフロー

「水災害トータルエンジニアリングサービス」のフロー

こうした対策には、地形や建物の位置、洪水や氾濫のシミュレーションなど、3Dでの計画が欠かせませんね。洪水による建物の被害を少しでも減らす取り組みとして、今後、注目されそうです。

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