管理人のイエイリです。
鹿島建設の鹿島技術研究所(所在地:東京都調布市)には、京王線飛田給駅近くの本館のほか、南東約1.2kmに西調布実験場があります。
西調布実験場は多摩川に近くにあり、国土交通省の水害ハザードマップ「浸水ナビ」によると計画規模降雨時の最大浸水深は49cmと推定されています。
しかし、最近の洪水は激甚化しているため、将来的な降雨量の増大も勘案して洪水氾濫解析を行うと、余裕をみて1.5mの浸水深を覚悟した方がよさそうです。
一方、同実験場には複数の建物が建っており、どの棟にも高価な実験機器があるため、浸水による被害が心配されていました。
そこで鹿島は、実験場の敷地全体を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
止水壁で囲む
工事を行うことにしたのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
つまり、実験場の周囲に“陸地内堤防”を築き、周囲が浸水しても大丈夫にしようというわけですね。この工事は2023年9月に着工し、2024年10月に完了する予定です。
そこで敷地の外周に鉄筋コンクリート(RC)造と、圧迫感を和らげるために一部ガラススクリーン製の止水壁を設けることにしました。
普段、出入り口として使っている部分には、浸水が発生すると自動的に立ち上がる起伏式止水板を配置します。
止水板が立ち上がった後、出入りに支障があると外部から孤立してしまうので、止水壁の一部に階段を設けて乗り越えられるようにします。
しかし、地表を止水壁で囲んでも、地下の排水管から水が入ってくると意味がありません。
そこで、排水管の逆流を逆止弁と仕切弁によって防ぐ
二重逆流防止弁
を取り付けて、“完全防水”を実現したのです。
河川の増水や台風接近時に、これらの設備を実際に運用するため、「行動タイムライン(防災行動計画)」を作成し、人員配置の計画が行えるようにしました。
対策工事が完了した後は、この行動タイムラインをBCP(事業継続計画)訓練などの際に見直し、より実効性の高いものにレベルアップしていく予定です。
鹿島は2022年10月に「水災害トータルエンジニアリングサービス」の提供を開始しました。(鹿島のプレスリリースはこちら)
今回の対策工事は、このサービスの「予測」「予防」「対応」を自社施設で活用し、実施するものです。
こうした対策には、地形や建物の位置、洪水や氾濫のシミュレーションなど、3Dでの計画が欠かせませんね。洪水による建物の被害を少しでも減らす取り組みとして、今後、注目されそうです。