奥村組が下水道の“密観測”システムを開発! センサー、通信、設置方法の革新で損傷箇所を効率的に発見
2023年9月29日

管理人のイエイリです。

下水道の管路が老朽化で損傷すると、管路内に地下水などの不明水が侵入し、下流のマンホールから水が噴き出して「内水氾濫」が起こります。

しかし、膨大な管路網には、人間が入れない細い管路も多いので、損傷箇所を突き止めるのは、至難の業です。

そこで奥村組コアシステムジャパン(本社:東京都八王子市)は、数多くのマンホール水位を効率的に取得・管理できる水位モニタリングシステムを開発しました。

日ごろ、観測を行っていないマンホールに、省電力、高耐久で簡単に設置できる「バックアップ水位計」を“密”に取り付け、

ナ、ナ、ナ、ナント、

点検車でデータを回収

して回るシステムなのです。(奥村組のプレスリリースはこちら

モニタリングシステムの概要図。日ごろ観測を行っていないマンホール(青の三角)にバックアップ水位計を取り付け、密に水位観測を行う(以下の資料、写真:奥村組)

モニタリングシステムの概要図。日ごろ観測を行っていないマンホール(青の三角)にバックアップ水位計を取り付け、密に水位観測を行う(以下の資料、写真:奥村組)

バックアップ水位計に蓄積された水位データを、点検車で回収するイメージ。省電力のLoRa通信を使っている

バックアップ水位計に蓄積された水位データを、点検車で回収するイメージ。省電力のLoRa通信を使っている

このシステムは、既存の下水道水位計の(1)センサー技術、(2)通信技術、(3)水位計の固定治具の3項目を改良したものです。

メイン水位計を備え、常時、水位観測を行っているマンホールでは、水位データを一般の携帯電話回線(LTE)で送っています。しかし、密な観測となると通信料金がかさむほか、消費電力が大きいので大型の専用バッテリーを定期的に交換する必要がありという課題がありました。

そこでバックアップ水位計には、消費電力が小さい「LoRa通信」を採用し、蓄積した水位データを点検車両に搭載した受信機で回収する仕組みを採用しました。LoRaの消費電力は、LTEの50分の1程度なので、電源には市販の乾電池が使えます。

こうして平常時の水位をもとに、各管路の流量を計算することで、「不明水」が流入している部分が特定でき、修繕や改築などの計画に生かせるというわけですね。

また、洪水時にはメイン水位計のデータをもとに、他のマンホールの水位を予測し、あふれそうな時には避難や応急対応の判断や、内水氾濫の予知・対策にも活用できます。

必要なデータが得られたら、これらのバックアップ水位計を別の管路網に移設して観測を行いやすくするため、「水位計一体型固定治具」を開発しました。

設置時間が従来のアンカー固定方式に比べて25%の15分ですむため、大幅なスピードアップが図れます。

バックアップ水位計をスピーディーに設置できる「水位計一体型固定治具」

バックアップ水位計をスピーディーに設置できる「水位計一体型固定治具」

そして、水位計の核となるセンサーには、従来の電気式棒状水位計に代えて、下水による

腐食や落雷にも強い

「ヘテロコア光ファイバー水位計」を採用しました。

これは、創価大学理工学部が開発した「ヘテロコアファイバーセンサー技術」を、水位計に応用したものです。

センサー部分が細くなった光ファイバーを曲げることで、変位などを感知するものです。これを水位計に仕込み、水圧で光ファイバーの曲率が変化することで水位を計測します。

ヘテロコア光ファイバーの原理

ヘテロコア光ファイバーの原理

ヘテロコア光ファイバーを使った水位計の概念図

ヘテロコア光ファイバーを使った水位計の概念図

下水管路の損傷箇所を、マンホールの水位データをもとに計算で突き止め、管内点検ロボットで詳細な状況を確認できると、下水道の維持管理や内水氾濫対策も、効率的に行えそうですね。

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