管理人のイエイリです。
オリエンタル白石が施工したある現場では、現場の広さの割には“過剰”な数のタワークレーンが配置されていました。そして、現場事務所では、ずらりと並んだモニターの前で多くの人が仕事に集中していました。
彼らはいったい、何をしているのかというと、現場の地下に配置された30台もの油圧ショベルを、
ナ、ナ、ナ、ナント、
遠隔操作で掘削
していたのです。
クレーンが配置されたコンクリート躯体は、「ニューマチックケーソン」と呼ばれるものです。その底部の作業室は高圧の空気で満たされており、地下水が入ってこないようにしながら地盤を掘削します。
掘削した土砂は、「マテリアルロック」という、圧気が漏れない二重ふた構造の部分を通って外部に排出し、ケーソン自体を少しずつ、地盤に沈めていきます。
1960年代までは、高圧室内に人や重機が入って掘削作業を行っていました。しかし、高圧室の気圧は現場によっては7~8気圧にも達することがあるため、“潜水病”とも呼ばれる減圧症を防ぐため、作業終了時には長時間をかけての減圧が必要でした。
そこで、ニューマチックケーソンの掘削作業は、1970年代から天井走行式ショベルが開発され、80年代からは遠隔操作が実用化されてきたのです。
いわば、ニューマチックケーソンは“遠隔操作界のトップランナー”というわけですね。
そして、さらに遠隔操作の技術は進化してきました。天井走行式ショベルに、現場を3Dデータで計測するLiDARなどの様々なセンサーを取り付けて、現場の形状をリアルタイムで「デジタルツイン化」できるようになったのです。
さらに驚くべきことは、デジタルツイン上で掘削範囲を指定するだけで、
ショベルが自動的に掘削
してくれるのです。
このケーソンショベル自動運転は、オリエンタル白石と、東京大学松尾研究室発のAI(人工知能)スタートアップDeepX(本社:東京都文京区)が共同開発した、デジタルツイン施工管理システム「GeoViz」によるものです。
2023年7月24日に、オリエンタル白石のつくば機材センターに設けられた、ニューマチックケーソン工法訓練施設「TechFarm」で報道陣に公開されました。
現在は、AI(人工知能)技術によって複数台のショベルを協調自動運転させて、圧気室の中央部分の掘削を行い、排土エリアに集めることができます。
今年度中には、実際の現場に導入して実証実験を行うほか、今後、排土用バケットへの自動積み込みやケーソン周辺部の沈下掘削の自動化、そしてクレーンなどによる排土作業の自動化などを進め、ケーソン工法の完全自動化を目指すとのことです。
オリエンタル白石は、ケーソンショベルなどを自社で製造しています。完全無人化が実現すると海外にもマシンを輸出するという新ビジネスも、立ち上がってきそうですね。