管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト、「Archicad」の開発元であるGraphisoft(以下、グラフィソフト)の本拠地はハンガリーのブダペスト郊外にある「グラフィソフトパーク」という工業団地にあります。
「パーク」という名前の通り、工業団地とはいえまるで公園のような場所です。すぐ裏には、あの“美しく青き”ドナウ川が流れているのです。
2023年10月4日、この本社ビルで最新版の「Archicad 27」をはじめとするグラフィソフトのDX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略を発表する「Building Together Connect」というイベントが開催され、世界のBIM関連ジャーナリストが招かれました。
今回、バージョンアップされたArchicadなどの重点開発テーマは、デザイン、ドキュメント、ビジュアライズ、コラボレートです。
それを象徴するのが、「Archicad Collaborate」という新たなサブスクリプション版が登場したことです。
ArchicadとBIMプラットフォーム「BIMcloud」がセットになった製品ですが、年額料金は税込みで41万8000円と、
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMcloud分は無料
という価格設定になっているのです。
意匠、構造、設備の設計者や現場の技術者など、様々な建設関係者がコラボしながら、BIMで設計や施工管理を進めていくためには、もはやクラウドによる「コネクト」は欠かせなくなったことを感じさせる製品です。
Archicad自体の新機能としては、様々なデザインの代替案を検討しやすくした「デザインオプション」や、柱や壁などから正確な位置に窓などの部材を配置できる「距離ガイド」、BIMオブジェクトを作成する言語「GDL」の編集機能の改良などがあります。
このほかVR(仮想現実)やAR(拡張現実)との連携のための「FBX」形式のデータ入出力機能や、ダクトや配管などの設備をモデリングする「MEPモデラー」の改良、構造計算用モデルの書き出し機能の改良、他社のBIMソフトとデータ交換を行う「IFC4」の入出力機能のbuildingSMARTによる検定合格など、「コネクト」に関連する機能が強化されました。
また、ArchicadのBIMモデルをスマートフォンやタブレットで閲覧するビューワーアプリ「BIMx」は、単にモデルの閲覧だけでなく、現場で課題や設計変更の要望などを入力し、BCFというデータ形式でBIMモデルにひもづけて設計者に戻すラベル機能が強化されました。
日本では発売されていませんが、設備設計用の本格的な3次元CADソフト「DDScad」も、電気配線の電流を自動集計したり、配線を設置するケーブルトラフの設計機能が強化されたりしています。
今回の発表では、Archicadからの構造設計用のモデル書き出し機能やMEPモデラーの改良、DDScadの機能アップなど、設備設計面もかなり力が入っていることがうかがわれます。
日本語版のArchicad 27のサブスク版は2023年9月27日に発売されており、永久ライセンス版は10月10日に発売されます。詳しくは、グラフィソフトジャパンのウェブサイトをご覧ください。
新バージョンのリリースが発表されたばかりですが、グラフィソフトでは次期バージョンの開発が既に始まっており、その中には、
生成AIを活用した新機能
に関するものも多く含まれているところが興味深いです。
例えば、AIを利用したデザインの発想やビジュアライゼーション、設計支援などです。
具体的には建物のコンセプトを決めた後、生成AIに「木材を表面に出したモダンなオフィス」などのプロンプトで様々なバリエーションのデザインを作り、それをもとに設計を仕上げていくといったワークフローを想定しているようです。
グラフィソフトジャパンでは、今回のバージョンアップについてのオンライン発表会「Building Together Japan 2023」を10月20日(金)に開催します。ご興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。(詳細、参加申し込みは、こちらから)