管理人のイエイリです。
建物の設計初期段階では、建物の形状や規模などのプランを複数、同時検討することが珍しくありません。
その裏方で、人知れず汗をかいているのが構造設計者です。それぞれの設計案に対して構造検討を行い、最適な構造や断面寸法、躯体数量などをスピーディーにはじき出さないといけません。
一方、建設業の残業規制が厳格化される「2024年問題」の施行も迫っており、「早く帰る」ことも、職場の重要な課題となっています。
そこで、清水建設はAI(人工知能)開発会社のヘッドウォータース(本社:東京都新宿区)とヘッドウォータースコンサルティング(本社:東京都新宿区)の協力を得て、鉄骨構造の検討業務用AI「SYMPREST」を開発し、クラウド上のWEBアプリケーションとして運用を開始しました。
検討中の建物の形状や寸法を入力するだけで、そのニーズにほぼほぼ合った構造架構を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
瞬時に複数案
提案し、躯体数量も表示してくれるのです。(ヘッドウォータースのプレスリリースはこちら)
「SYMPREST」は、高さが60m以下の鉄骨造オフィスビルの検討に使えます。
設計者はイメージに合った構造架構を選び、スパン構成などを微調整すると、AIが構造部材の断面を仮定して、3Dモデルを作成、モニター上に表示します。
3Dモデルの各部材をクリックすると、断面寸法が表示されます。この3Dモデルは、実施設計に用いる構造解析プログラムの入力データに変換できるので、解析の準備に要する時間や労力も大幅に削減できます。
これだけスピーディーに、構造案を出してくれる秘密は、AIがその都度、構造計算するのではなく、様々なパターンの構造を
事前に“暗記”
しているからなのです。
そのため、AIの学習データとなる構造架構を自動生成するアルゴリズムを開発し、15階以下(地下なし)、1方向最大10スパンという条件で、様々なオフィスビルの規模・形状に応じた構造架構データを約1500棟分生成しました。
SYMPRESTは数多くのデータを学習し、部材断面推定の習熟度を高めてきました。今後は超高層オフィスビルや、他の用途のビルについても構造架構の生成を行い、AIの機能拡充を図ります。
このAIを構造設計者が“子分”として使うと、残業時間を減らことができ、2024年問題解決策として、大いに効果を発揮してくれそうですね。