管理人のイエイリです。
クレーン作業に欠かせないワイヤロープの外観目視検査は、作業開始前の日常点検で欠かせません。
しかしながら、ワイヤの全長、全周にわたって断線や摩耗、腐食、傷などを目視で点検するのは、大変な労力が必要です。
そこで、熊谷組とパシフィックシステム(本社:埼玉県さいたま市)は、クレーンワイヤの外観を検査する「クレーンワイヤー全周囲外観検査システム」を開発しました。
ワイヤロープの周囲をカメラで撮影し、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIで傷やほつれ
を判定してくれるのです。(熊谷組のプレスリリースはこちら)
このシステムは、クレーンに搭載して使われます。
巻き下げ中のワイヤロープを4方向から撮影する「撮影ユニット」と、撮影したデータを収録・良否判定を行う「処理ユニット」、そして判定結果の表示と検査の起動を遠隔操作で行う「閲覧ユニット」で構成されています。
クレーン本体は走行移動するため、処理ユニットと閲覧ユニット間は無線伝送を行います。
撮影画像は、横720ピクセル×縦540ピクセルの元画像に対して、画像中心の最も明るい部分の横720ピクセル、縦2ピクセルを撮影します。
巻き下げ定格速度13m/min(0.217m/秒)で動くクレーンワイヤを0.3㎜ずつ、723fpsの速度で連続撮影して全体の写真撮影を行います。
AI判定には、正常な画像だけに基づいて良否判定を行う「アノマリー判定」を使っており、画像処理で異常があれば欠陥(良品外)として、その位置を特定します。
教師データには、
新品のワイヤロープ
の画像を使います。
異状が検知された場合は、その箇所の画像とともに、異状の位置を距離で表示します。
このシステムは、稼働中のシールド現場の防音ハウスに設置した、天井走行クレーンに導入し、16カ月の試験運用を行いました。
その結果、得られた140件の異状データを解析したところ、軽微なゴミ付着によるものと判明しました。異状位置も判定できているため、実運用に耐える信頼性があることがわかりました。
一方、画像では確認できない異状判定も散発的に発生したため、良否判定の精度を上げる改善も行っています。

ワイヤロープ検査システムを導入したシールドトンネル工事用のクレーン。仕様は定格荷重10tのクラブトロリー式天井走行クレーンで、揚程は地上5.7m地下19.4m 合計25.1m、巻き上げ速度13m/min(0.217m/s)、使用ワイヤーロープはIWRC 6×Fi(29)B種 φ20㎜
両社は今後、クレーンメーカーや機種を問わずに、このシステムを適用できるように開発を進めていく方針です。
これが実現できると、クレーン作業時のワイヤロープ点検がスピーディー、高精度になるため、点検作業の生産性向上とともに安全性の向上も期待できそうです。