管理人のイエイリです。
建物の設計時に行われる地震解析では、建物の柱や梁などの構造部材に応じて「解析モデル」を作り、予想される地震波をこのモデルに入力して、各階の揺れや部材に発生する応力度などを計算します。
解析モデルというとイメージしにくいですが、建物全体の剛性や減衰性を、縦横の数字が並んだ「行列」で表現したものと考えればよいかもしれません。
一方、強い地震動にされされた建物は、柱や梁などの構造部材の一部が損傷している場合がありますが、壁や床などの裏に隠れた構造部材を目視で点検し、劣化などの状況を発見するのは至難の業です。
そこで、西松建設は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
地震応答から“逆解析”
を行うことで、地震後に変化した解析モデルを自動推定する「構造ヘルスモニタリングシステム」を開発しました。(西松建設のプレスリリースはこちら)
この構造ヘルスモニタリングシステムは、加速度計などのセンサーを建物の各階などに設置しておき、地震が発生したときに地面の揺れ(入力波)と、各階の揺れ(応答波)を計測します。
そして既知の入力波と応答波から、逆解析によって建物の解析モデルを推定します。
時々発生する地震で解析モデルが変わっていないかを確認するのは、人間にたとえると定期健診のようなものです。
一方、大地震に被災した時は、解析モデルに変化が見つかると、柱や梁などが損傷したことを意味します。
そして、どこの柱や梁が損傷したのかがわからなくても、変化した後の解析モデルによって、
今後の地震への耐震性
を新たな地震応答解析で判定できるのです。
上の図が今回、開発した構造ヘルスモニタリングシステムによる、建物の安全性判定の流れです。
一般的なシステムは(0)地震発生→(1)各センサーで震動データを計測→(2)管理パソコンでデータを収集し、建物の継続使用性を自動判定→(3)判定結果をメールなどで関係者に通知、する機能までです。
今回のシステムはさらに(4)計測データから解析モデルを逆解析で推定→(5)推定した解析モデルで今後の地震リスク評価や地震被害の検証を短時間で実施、という機能が追加されたのが新しい点です。
解析モデルをさらに逆解析することによって、柱や梁の損傷部分をピンポイントで発見できるようになることも、期待できそうですね。
このシステムは、西松建設が開発全般を担当し、構造計画研究所(本社:東京都中野区)がシステム設計を担当しました。東京都港区内の事務所ビルで運用が始まっています。