三菱電機が職人芸を“盗んで学ぶ”AIを開発! 公共インフラ運転のDX化を早期に実現
2025年3月6日

管理人のイエイリです。

モニターや計器がずらりと並ぶ公共インフラの指令室では、ベテランオペレーターが各種の情報を総合的に監視し、判断しながら数多くの設備を制御しています。

こうした業務の自動化や技術伝承を行うときは、熟練オペレーターに「どんな時に、どんな操作を行うか」ということをヒアリングし、その答えをもとに「異常の検知」→「設備の操作」といったノウハウをルール化する必要がありました。

ただ、あまりにも膨大なデータを扱っているため、オペレーターが十分に説明しきれなかったり、自分自身でも気づいていない「暗黙知」による操作を行ったりしているため、ヒアリングだけでは十分なノウハウが得られないこともよくあります。

そこで三菱電機は、ベテランオペレーターが見ている計器類の値や操作を時系列的に整理し、AI(人工知能)で解析することによってインフラ設備の操作ノウハウを明らかにする「操作ログドリブン開発技術」を世界で初めて開発しました。

つまり、ベテランオペレーターの職人芸を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

“盗んで学ぶ”AI

なのです。(三菱電機のプレスリリースはこちら

従来はベテランオペレーターにヒアリングしてノウハウを把握していた(左)が、「操作ログドリブン開発技術」ではオペレーターが実際に行った操作からノウハウを明らかにする(右)(以下の資料:三菱電機)

従来はベテランオペレーターにヒアリングしてノウハウを把握していた(左)が、「操作ログドリブン開発技術」ではオペレーターが実際に行った操作からノウハウを明らかにする(右)(以下の資料:三菱電機)

とは言え、膨大なデータから異常を発見し、操作に至るまでには、オペレーターによって様々な手順があります。

例えば、「異常の原因」→「前半の現象」→「後半の現象」と、データが変化したことを順番通りに見て「異常発生」を認識し、設備を操作する人もいれば、「後半の現象」に気づいてからその前段階のデータを確認して「異常発生」を判断する人もいます。

人によって手順の違いやどの部分のデータを主に見ているかといった違いはありますが、「異常発生」を判断するデータの組み合わせや、異常を解決するためにどの設備を操作するのかという点では同じです。これこそが共通のノウハウとなるのです。

オペレーターによってデータを見る順序は違うが、同じ目的の操作で使っているデータは同じなので、この共通するデータの組み合わせこそが、操作ノウハウとなる

オペレーターによってデータを見る順序は違うが、同じ目的の操作で使っているデータは同じなので、この共通するデータの組み合わせこそが、操作ノウハウとなる

オペレーターの操作スタイルは見た目ではわかりにくい(左)が、異常発生後のどの部分のデータを主に見ているかを分析し、プロットすると操作スタイルが似た人がわかる(右)

オペレーターの操作スタイルは見た目ではわかりにくい(左)が、異常発生後のどの部分のデータを主に見ているかを分析し、プロットすると操作スタイルが似た人がわかる(右)

この「操作ログドリブン開発技術」によって、ヒアリングだけではわからなかった操作の実態や暗黙知までもが明らかになります。

そのため、「どんな状況の時、どんな操作を行うか」を定義する「要求分析」と呼ばれる作業が、従来の

6カ月から1カ月に

大幅に短縮できるのです。

従来のヒアリングによる開発(上段)と操作ログドリブン技術による開発(下段)の工程の比較。DXシステムの開発工程は大幅に短縮される

従来のヒアリングによる開発(上段)と操作ログドリブン技術による開発(下段)の工程の比較。DXシステムの開発工程は大幅に短縮される

三菱電機は2025年度からこの技術の実証試験を行い、2027年度から公共インフラシステムなどでの実用化を目指します。

将来的には建設業や製造業、医療、物流など他の業界にも応用して、同社のデジタル基盤「Serendie」と連携してあらゆるオペレーションのDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を目指します。

日本では昔から職人は、「親方の技を盗んで学ぶ」という文化がありましたが、公共インフラや建設現場のIoT(物のインターネット)化やデジタルツイン化が進むことで、AIが人間の職人芸を盗んで学べる時代になってきました。

「操作ログドリブン開発技術」は、ベテランオペレーターのノウハウを電子化し、技術継承していくうえでも大いに役立ちそうですね。

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