管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事では、爆薬を仕込むボーリングや発破などは機械化や自動化が進む一方、内面を覆う覆工コンクリートの打設や締め固めなどは、多くの熟練技能労働者が必要となります。
しかし最近は慢性的な人手不足が続き、十分な人数を確保することが難しくなってきています。さらにこの工程は、作業員の熟練度によって品質にばらつきが生じやすく、繰り返し作業や狭隘な環境下での苦渋作業が多いことも課題でした。
ところが、中日本高速道路名古屋支社が発注し、奥村組が施工する「東海環状自動車道養老トンネル北工事」の現場では、覆工コンクリート打設の時間帯になっても、作業員があわただしく動き回る様子が見られません。
実は、この現場では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
覆工コンクリートの自動打設
システムが稼働しているのです。(奥村組のプレスリリースはこちら)
このシステムは、奥村組とトンネル用型枠(セントル)メーカーの北陸鋼産(本社:富山県滑川市)が共同開発したものです。
覆工コンクリート打設を自動化する「自動打設システム」と「養生温度制御システム」からなります。
「自動打設システム」は、奥村組が開発した「高速打設システム」と「圧力計による打設高さ検知システム」を組み合わせ、圧送ポンプとバイブレータの制御を自動で行う仕組みです。
あらかじめ設定した打上がり高さに応じて、生コンクリートのポンプ圧送速度やコンクリートを締め固めるバイブレーターの稼働・停止を定量的なデータに基づいて自動制御するので、打設口の切り替え作業を除いて全自動で施工を行うことができます。
これにより、技能労働者の熟練度に依存しない安定した品質の覆工が可能になりました。
一方の「養生温度制御システム」は、打設後1日程度のコンクリート温度を測定し、その値から圧縮強度をリアルタイムに算出します。
所定の時刻までに脱型に必要な強度が確保できそうにない場合は、型枠に取り付けた面状発熱体に電力を供給し、加熱することで養生時間を短縮します。
これにより、コンクリートの強度不足やひび割れを防ぎつつ、セントルの脱型時期を最適化することができるのです。
この2つのシステムを組み合わせることで、覆工コンクリート施工の型枠脱型からセントルの移動・据付、打設、養生完了までの一連工程のサイクルタイムは、従来は2日かかっていたのが、
わずか1日に短縮
できるようになったのです。
実際の現場では、セントルの脱型・移動・据付が約3時間、休憩2時間、コンクリート打設5時間、そして翌日の脱型までの養生が約14時間で、合計24時間で1サイクルを完了。脱型時には十分な強度を確保し、表面剥離やひび割れといった不具合も発生しませんでした。
さらに、型枠脱型からコンクリート打設完了までを同日に行う「セットコン」という集中作業が行えるようになり、これを週に1回行うことで、月あたり約150m(1スパン12.5m×12回)の進捗を実現しました。
そして生産性向上により、無理することなく週休2日を確保できるようになったのです。
施工のオートメーション化によって生産性向上や省人化だけでなく、施工サイクルを人間の生活リズムに合わせるという、高度な働き方改革へと進みつつあるようです。
























