管理人のイエイリです。
ダム湖や河川、海岸付近の水深や水底の地形を測る「浅深測量」は、小型ボートを現場まで運んだり、人が標尺を持って水中に立ったりと、大変な手間と労力が必要な仕事です。
この作業を合理化するため、愛知県刈谷市の測量会社、アペオ技研はこのほど新兵器を導入しました。
長さ1.2mのボートは単なるラジコンボートのようにも見えますが、
ナ、ナ、ナ、ナント、
GPSや水深計測ソナー
を搭載したハイテク測量船なのです。
自律走行無人ボート「RC-S3」(左)。測量中の風景(右)(写真:アペオ技研。以下同じ) | |
計測した水深データを表示する現場用パソコン「タフブック」(左)と、スクリューまわりのからみ防止対策(右) |
このボートを水深計測線に沿って無線操縦で走らせると、深さ80mまでを1cmの精度で測ることができます。
動力は直流モーターで、電源はリチウムイオン充電池を使います。最大速度は4.5ノット(約8.3km/時)で、210分間の連続走行が可能です。
高性能自律制御プログラムを採用しており、浅深測量する測線や目的地を自律走行システムにインプットすれば、測線から0.5m以内の位置を保ちながら自動的に測量してくるという賢さです。
重さはわずか16kgなので、一人で持ち運びや作業できます。かなりの省力化が図れそうですね。
計測した水深のデータ |
遠隔操作には無線LANを使っています。しかし、もし、途中で電波が届かなくなったり、バッテリーがなくなったりして、高価なボートが行方不明になったらどうなるのでしょうか。
でも、心配はいりません。もし、通信が連続して30秒以上途絶えたり、バッテリー残量が20%を切ったりしたときには、
電源を入れた地点に戻る
という「自動回帰」の機能が備わっているのです。これなら、安心して使えますね。
アペオ技研では、GPSが受信できない橋の下や暗きょ、水際の樹木が茂っているところなどでも測量できるようにするため、ボートに全周プリズムを取り付け、トータルステーションに自動追尾することも行っています。
この場合、ボートでは水深データと測定した時間を記録しておき、後の解析で時間を手がかりにしてトータルステーションの位置情報と水深を結びつけます。
計測実験を行うアペオ技研のスタッフ |
すでに動作確認済みで、今後、橋の下などで実証実験を行うそうです。その結果は3D化して、AutoCAD Civil 3Dで扱えるようにすることを目指しています。
これからの測量業では、無線操縦や自律走行など、ラジコンマニア的なスキルとノウハウが求められるようになりそうですね。