管理人のイエイリです。
富士電機と言えば、日本を代表する重電機器メーカーです。クラウドシステムの普及により、データセンターの需要が高まりを見せるなか、同社は今月、モジュール型データセンターを発売することになりました。
サーバーや無停電電源装置(UPS)、受変電設備などを収納するブロックを工場で製作し、これらを組み合わせてデータセンターを構築する「ビルト・イン・ブロック方式」を採用しています。
そのため、「データセンターを段階的に立ち上げたい」「一部を増設したい」といった顧客のニーズに応じて必要なブロックを選択できるため、最小限の投資でデータセンターを構築することができます。
建屋にはコンビニエンスストアの店舗建設で実績のある「エコロパネル方式」というものを採用しています。エコロパネルとは、工場で構造体をパネル化するプレハブ工法ですが、
ナ、ナ、ナ、ナント、
鉄骨の代わりに国産木材
を採用しているのです。しかも、間伐材なのでその名の通り、環境にも優しいですね。
国産木材(間伐材)を利用した「エコロパネル方式」(資料:富士時報Vol.84 No.1 2011より) |
エコロパネル方式の採用により、約3カ月という短工期でデータセンターを構築できます。サーバールームの冷却には、外気と冷媒を使った空調機を併用するハイブリッド方式の間接外気空調ユニットを採用し、大幅に消費電力を抑制しています。
このほか、専用の運用管理システムにより、電力や熱源、空調、環境を一元管理し、最適運転を行います。
これらの相乗効果により、このデータセンターの省エネ性能は
モジュール型データセンター(写真:富士電機) |
PUEがわずか1.1
という高い省エネ性能を実現しています。
PUEとは、データセンターのエネルギー効率を示す指標です。データセンター全体で消費する電力を、サーバーなどのIT機器の消費電力で割った値がPUEで、最も効率が良いデータセンターは、PUEが1.0になります。
一般的な新築データセンターはPUEが1.5程度だそうです。
主要システム構成機器 ・データセンター建屋(商品名:F-eModuleCube) ・間接外気空調ユニット(商品名:F-COOL NEO) ・データセンター運用管理システム(商品名:F-DMS) ・ニッケル水素電池搭載ラックマウント型UPS(商品名:LXシリーズ) ・計測機能付きバスダクト配電システム ・監視カメラシステム ・各種電力測定・監視機器 ・通信機能付温湿度センサー、ほか |
このニュースリリースを見て、驚いたことが2点あります。1つは富士電機という重電メーカーが、コンビニエンスストアなどの建築ビジネスを手がけていたことを知ったこと、2つ目はデータセンターというハイテク施設の構造部材に木材、しかも間伐材を使っていたということです。
建築業界ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及により、設計段階で意匠、構造、設備の干渉チェックを行った物件については現場合わせの施工が必要なくなるため、工場製作によるプレハブ化でコストダウンや工期の短縮などが実現できることが期待されています。
しかし、見方を変えれば建物も工場で作れる製品となるわけで、そうなると富士電機のように工場を持っている企業が建築分野に参入できることを意味しています。
プレハブ化が進んだとき、建設業がいかに現場施工で培ったノウハウを生かし、工場生産によるプレハブ化の主導権を握っていくべきかを、そろそろ考えた方がいいのかなと思った次第です。