管理人のイエイリです。
ビルなどの大きな構造物が大地震で損傷を受けた時、建物がどの程度危険なのかをすぐに判断し、ビル管理者やテナント入居者に情報提供する必要があります。
しかし、構造物の専門家が巡回診断するためには時間的、物理的な制限があります。また、多くの地震計を設置して自動的に判定する技術もありますが、従来の地震計は高価なため、診断に必要な台数を設置するのが難しい面もありました。
富士電機はこうした状況を解決するため、独自開発の加速度センサー装置を搭載した振動計測センサーを開発しました。ビルの振動計測に必要な性能と低コストを両立させ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
構造ヘルスモニタリング
の実現を目指すという画期的なものなのです。
構造ヘルスモニタリングとは、構造物に設置したセンサーによって振動などを計測・解析することにより、蓄積された損傷や劣化の発生個所、その程度について診断・予測する技術のことです。
これが実現すると地震が起こったとき、建物各部の加速度や変位などから建物の変状を把握し、「8階は異常なし」、「3階はやや損傷」といった診断がリアルタイムに行えるわけですね。
ビル用の振動計測センサーの試作機(写真・資料:富士電機。以下同じ) |
振動計測センサーの寸法は幅90mm×奥行き113mm×高さH60mmで重量は約600g。この1台で水平・垂直の3方向の加速度を計測できます。
計測可能な地震動の周波数は長周期地震動の計測に必要な0.1Hzから低層の建物に対応できる50Hzまでと広くなっています。
柱などの構造部材のダメージを推定するためには、各階の「層間変位」を求めることが必要です。そこで加速度を積分して高精度に変位を求められるように3方向の計測時刻を1000分の1秒以下にすることも可能です。
計測した加速度記録は、内部でデジタル化し、LANケーブルを通じてパソコンなどの外部機器に直接データを送信できます。
LANから電源も 供給
できるので、配線もシンプルになります。
そして、屋外での使用を想定して、防水型のケースも用意するとのことです。
富士電機は戸田建設と共同研究を行っており、戸田建設の技術研究所に実物大の試験建物を設け、振動計測センサーや診断処理装置、結果表示用モニターを使って実際に建物の診断を行うための検証を進めています。
「実大振動試験装置」による検証実験概要図 |
加速度や変位のデータを使って構造物の健全性を判断するためには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のような構造モデルとセットで運用することが求められそうですね。
建物の維持管理段階では、エネルギー管理やセキュリティー管理のほか、今後は構造ヘルスモニタリングというメニューが追加されてきそうです。