最近、中国の上海で実物の住宅を造った巨大3Dプリンターがネットやマスコミで話題になっています。
コンクリート状の材料を壁の両側に沿って一定の厚さごとに、層状に積み上げながら、中空部分にトラス形の補強材を造形していくものです。
私はこの造形シーンをビデオで見たとき、最初に感じたのは、南カリフォルニア大学で開発中の巨大3Dプリンター、「コンター・クラフティング(Contour Crafting)」によく似ているな、ということでした。
昨日、この3Dプリンターの件で、TBSテレビの「あさチャン!」という番組から取材を受け、その様子が5月9日の7時16分に放送されました。
この番組では時間の都合上、ごく一部しか放送されませんでしたが、実は裏話がありました。
取材の前日、念のためにコンター・クラフティングの開発者である同大学のベロック・コシュネビス(Berok Khoshnevis)教授に上海の3Dプリンターとの関係を聞いてみたのです。
その結果、衝撃の事実が明らかになりました。
上海の巨大3Dプリンターは、コンター・クラフティングを
ナ、ナ、ナ、ナント、
勝手にまねた“コピー品”
ということがわかったのです。
コンター・クラフティング | 上海の3Dプリンター |
(上下2点の資料:南カリフォルニア大学、Berok Khoshnevis) | (上下2点の資料:CNC Newsより) |
詳しい経緯については触れませんが、上海の会社(WinSun Decoration Design Engineering
Company)のオーナーは、以前、南カリフォルニア大学のコシュネビス教授を訪れ、コンター・クラフティングの材料供給者として詳細な情報提供を受けました。
上海の会社はその後、自社で巨大3Dプリンターを作り、テレビの取材でも、独自開発の技術であるかのように説明してしまったのでした。
コシュネビス教授は中国で関連特許を取得しており、この巨大3Dプリンターでビジネスを行うなら訴訟も辞さないという姿勢です。なんとか、平和に解決してほしいですね。
ちなみに、上海の巨大3Dプリンターは、化粧型枠切削用のCNC(コンピューター制御)ルーターをのベースマシンとしており、材料を切削する刃物の代わりに、材料を吹き出すノズルを取り付けたもののようです。
一方、“本家開発元”の南カリフォルニア大学は、巨大3Dプリンターのビジネス展開に向けて大きく動き出しています。
コシュネビス教授らは、このほど「コンター・クラフティング社(Contour Crafting Corporation)」を設立しました。
米国の大手BIMソフトベンダーが出資を予定しているほか、
日本の大手建設会社
とも、共同開発の契約を行ったそうです。
BIMソフトで「印刷」ボタンをクリックすると、巨大3Dプリンターから実物の家が出てくる時代が、いよいよやってくるのでしょうか。楽しみですね。