管理人のイエイリです。
シンガポールの市街地で、竹中工務店が「マーケット・ストリート・タワー」という高層ビルを施工中です。
先日の記事では、現場事務所でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や3Dプリンターを活用している様子を紹介しました。
さらに後で発生する問題を前もって解決しておくフロントローディング(業務の前倒し)でも、入念な取り組みが行われていました。
まだ、ビルは完成前だというのに、
ナ、ナ、ナ、ナント、
次回の設備更新
の方法について、BIMモデルで冷凍機などの搬入シミュレーションも行っていたのです。
シンガポールと日本とでは、いろいろな面で文化が違いますが、設備工事の方法もご多分にもれず、やり方が微妙に違います。
例えば冷凍機を工場からトラックに載せて建物に搬入し、そこから機械室内の設置位置まで移動させるとき、ちょっとした段差があったとします。
日本だと臨機応変に仮設の鉄骨を組んでワイヤーで持ち上げるなどの方法でクリアしていきますが、シンガポールの場合は台車などに載せたままスムーズに搬入することが求められるそうです。
文化が違う国の建物を造るとき、自国の常識では当たり前だと思っていても、全く事情が違う場合があります。施工者が考えていることを事前に3Dモデルやアニメーションにして表現にして発注者などに見てもらうことにより、思い違いを発見しやすくなりますね。
こうしたBIMによるコミュニーションを通じて、発注者にも満足がいくように設計が改良されていくそうです。
設計・施工でBIMを使っても、現場の最前線ではやはりまだ紙図面が物を言います。そこで機械・電気設計のアシスタント・マネジャーを務める竹中工務店の伊勢田元さんは、苦心の末、BIMのわかりやすさを生かした
BIMっぽい2D図面
を開発しました。
取り合いが複雑な個所など重要な部分はCGパースを付けて空間的な位置関係が一目でわかるようにしました。さらに給水管や冷温水管などで色分けしたり、平面図や断面図に薄く影をつけたりと、まるで現場でBIMモデルを見ているような図面です。
伊勢田さんによると印刷したときに美しく、見やすいかどうかまで徹底的に色味を検討したそうです。
こうしたわかりやすさが功を奏し、当初、BIMに関心が薄かった他のスタッフに、次第にBIMの成果品などを積極的に活用するようになったそうです。
将来は全員がタブレット端末を持って、サーバー上のBIMモデルを見る、というのが理想かもしれませんが、それまでの移行期間にはBIMのわかりやすさをイメージできる図面の活用はいい方法かもしれませんね。