ライフサイクルBIMとは?EcoDomus社長が語る運用・維持管理のポイント
2014年5月2日

管理人のイエイリです。

建物の設計段階から普及し始めたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用は、施工からさらには維持管理の段階へと突入しようとしています。

BIMを使った維持管理システム「EcoDomus」を展開する米国・エコドムス(EcoDomus)社のイゴル・スタルコフ社長が4月25日、東京で“BIM for Handover and FM”(引き渡しとファシリティー・マネジメントのためのBIM)と題した講演会を開催しました。

講演するエコドムス社のイゴル・スタルコフ社長(写真:家入龍太。以下同じ)

講演するエコドムス社のイゴル・スタルコフ社長(写真:家入龍太。以下同じ)

会場はBIM関係者でぎっしりと埋まった

会場はBIM関係者でぎっしりと埋まった

EcoDomusとはどんなシステムかというと、意外にもシンプルな発想でした。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

視覚的データベース

 

として、BIMモデルを活用しようという発想なのです。

つまり、BIMモデルのほか、建物の維持管理やファシリティー・マネジメント(FM)、ビルディング・オートメーション(BAS)、基幹システム(ERP)などをEcoDomusというWEB対応のシステムを介してひとまとめにし、「ポータルサイト」のようにいつでも必要な情報を得られるようにしたものです。

BIMモデルの属性情報だけでなく、BIMモデルや点群データ上にリンクを張って、他のデータにアクセスするといった手法も大いに活用します。データをひとまとめに管理するため、維持管理データの仕様である「COBie」など、業界の標準規格との互換性も高くしているのが特徴です。

こうして、建物の完成後に建物の運用や維持管理などを幅広くサポートするBIMの活用を「ライフサイクルBIM」と呼んでいます。

建物の様々な情報を提供する「EcoDomus」のイメージ図。BIMモデルを視覚的データベースとして活用する

建物の様々な情報を提供する「EcoDomus」のイメージ図。BIMモデルを視覚的データベースとして活用する

BIMモデルを介して様々な情報にアクセスするイメージ

BIMモデルを介して様々な情報にアクセスするイメージ

点群データ上にリンクを張り、様々な情報にアクセスできるようにした例

点群データ上にリンクを張り、様々な情報にアクセスできるようにした例

同時に、建物のオーナーから現場最前線で作業する技師までを同じネットワークシステム上で協働することで、異常個所を発見した場合などの作業指示をタブレット端末などに送ってスピーディーに処理できます。

運用のポイントは、BIMモデルや他のシステムのデータと、実際の建物や設備を常に一致させるようにメンテナンスことです。それによって実物の代わりにデータを観察することで様々な管理を効率化することが可能になります。

つまり、情報と実物を常に一致させる“情物一致”こそが、効率化のポイントとなるわけですね。そして、情報の“5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)”を実践することにより、いつでも必要なデータを取り出せるようにすることも鍵となるようです。

イゴルさんに、英語で情物一致をどう言うのか聞いてみたところ、

 

“Accurate As-Built”

 

という言葉が返ってきました。直訳すれば「正確な竣工データ」ということでしょうか。

設計段階でBIMを使うときも、いきなりBIMですべてのことをやろうとせず、まず、小さい物件や限られた範囲で活用し、少しずつ活用範囲を広げていく、というのがセオリーですが、維持管理でも同様のようです。

「例えば、最初は冷温水管の管理に絞ってBIMモデルで維持管理し、その後、空調システムなどに管理対象を広げていくのがよい」とイゴル氏は説明します。

冷温水管だけに絞ってBIMモデルで維持管理した例

冷温水管だけに絞ってBIMモデルで維持管理した例

EcoDomusは3Dイノベーションズが日本代理店となり、NTTファシリティーズも導入する方針のようです。

建物のライフサイクルの中で、建設にかかる費用は2割程度に過ぎず、残りの8割は運用や維持管理段階で発生すると言われています。この巨額な費用をBIMによってコストダウンできるとなると、建物オーナーのBIMへの関心も高まりそうですね。

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