3DスキャナーとBIMを活用!下関の歴史的建物をバーチャル保存
2014年8月7日

管理人のイエイリです。

山口県下関市の唐戸地区にある同市の有形文化財、「田中絹代ぶんか館」の前身は、「逓信省下関電信局電話課庁舎」でした。1924年に完成したこの建物は、来年、竣工90周年を迎えます。

そこで下関市は、下関市文化振興財団などとともに、この建物を

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

BIMで保存、運用管理

 

する記念事業を開始したのです。

田中絹代ぶんか館の建物を、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)化することにより外観や内観を保存するとともに、各部分に維持管理に必要な「属性情報」を入力し、運用や維持管理にも役立てようという“一石二鳥”のプロジェクトです。

BIMソフト「Revit」でモデル化中の田中絹代ぶんか館(資料・写真:特記以外はNTTファシリティーズ、オートデスク、トプコン。以下同じ)

BIMソフト「Revit」でモデル化中の田中絹代ぶんか館(資料・写真:特記以外はNTTファシリティーズ、オートデスク、トプコン。以下同じ)

今回のプロジェクトには、NTTファシリティーズの監修のもと、オートデスク、そしてトプコンが協力しています。

作業手順はまず、トプコンの最新型3Dレーザースキャナー「GLS-2000」で建物の周囲15地点から外観を計測しました。そして同社の点群処理ソフト「ScanMaster」で、各地点で計測した点群を位置合わせして、約4500万点からなる一つの点群データにまとめました。

GLS-2000で建物の外部を計測する作業

GLS-2000で建物の外部を計測する作業

その点群データをオートデスクの点群編集ソフト「ReCap Pro」と、BIMソフト「Revit」によってBIMモデル化していきます。複雑な曲面もRevitの自由形状をモデル化する機能によって再現します。

ReCap Proに読み込まれた点群データ

ReCap Proに読み込まれた点群データ

統合された点群データRevitに読み込み、立体的にトレースすることでBIMモデルを作っていく

統合された点群データRevitに読み込み、立体的にトレースすることでBIMモデルを作っていく

今後は建物の内部や屋上を3Dレーザースキャナーで計測し、内観もBIMモデル化していきます。維持管理に必要な属性情報の内容は、今後、検討していくとのことです。

NTTファシリティーズの前身はご存じの通り日本電信電話公社で、その前をたどると逓信省に行き着きます。同社は逓信省の歴史的建物に詳しく、設計事務所の機能もあるため、今回のプロジェクト監修を行いました。

さらにこの建物が完成した大正時代の唐戸地区の地形や街並みを、オートデスクのCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)ソフト、「InfraWorks」でバーチャルに再現し、2015年2月にはクラウドシステム「InfraWorks360」を使って

 

WEB上で一般公開

 

することになっています。

InfraWorksで作った現在の唐戸地区

InfraWorksで作った現在の唐戸地区

大正時代の唐戸地区を再現した3Dモデル。海岸線や街路の形がかなり違うことがわかる

大正時代の唐戸地区を再現した3Dモデル。海岸線や街路の形がかなり違うことがわかる

今回のプロジェクトは、各社が無償で協力する形で行われました。下関市は出来上がった3Dモデルを一般公開することで、協力しています。

時代の流れとともに貴重な建物が取り壊されたりすることもよくあります。実物を保存するのは維持管理費や税金などで多額の費用がかかりますが、BIMで保存しておけば1回の費用ですむので保存しやすくなりますね。

また、バーチャルな建物をWEBで見た人が「今度は実物を見てみたい」と、現地を訪れる観光PR効果も見逃せません。

NTTファシリティーズ、オートデスク、トプコンは今回の実績を生かして、今後、歴史的建造物や街並みのBIMによるバーチャル保存を事業化していきたいとのことです。

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