管理人のイエイリです。
代表的なBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトの1つであるArchiCADの最新版、「ArchiCAD 19」が9月28日に発売されることになり、昨日(9月2日)、東京・丸の内で製品発表会が開催されました。
開発元のグラフィソフト(本社:ハンガリー)は2013年11月、日本を代表する建築設計事務所、日建設計と戦略的パートナーシップを結び、日建設計のノウハウをArchiCADに注入する作業が行われてきました。
その機能が反映されたのが、今回、発売されるArchiCAD 19なのです。日建設計によっていったい、このソフトはどのように進化したのが、最大の関心事と言えるでしょう。
製品発表会の会場であいさつしたグラフィソフトジャパン代表取締役社長のコバーチ・ベンツェ氏は、BIMソフトの中でも今回のArchiCAD19は
ナ、ナ、ナ、ナント、
「嘗てない速さ」
を実現したと語りました。つまり、現在のBIMソフトの中でも「最速」ということを豪語したわけです。
また、日建設計の安井謙介氏は開発の裏話として、「社内でArchiCADに対する改善要望を募ったところ、554件もの意見が出た」ことを明らかにしました。
これだけの改善要望を踏まえて、いったい、ArchiCAD 19ではどこが速くなったのかを見てみましょう。
まずは「予測的バックグラウンド処理」(特許出願中)です。BIMソフトは平面図、立面図、断面図と3Dパースの画面を切り替えながら設計作業を行います。
これまでは平面図などの画面で設計を直した後、3Dパース画面に切り替えるとそこからグラフィック処理が始まるので表示に時間がかかっていました。
ところが、ArchiCAD 19では平面図を直している間に、負荷が小さいプロセッサーを利用して、バックグラウンド処理により3Dパースや他の関連する図面の修正を自動的に行う機能が付きました。
そのため、平面図から3Dパース画面に切り替えたときの表示が、現バージョンに比べて30秒も速くなる場合もあるそうです。
次に設計中の様々な作業をスピードアップするための作業環境の強化です。
ビジネスソフトのように操作性をよくした機能として、「タブバー」が設けられました。これまではメニューを使って平面図、立面図、断面図、3Dパースの各画面を切り替えていましたが、これを表計算ソフトのようにタブでスピーディーに切り替えられるようにしました。
また、線の延長線同士の交点にスナップしたりする場合は、プレゼンソフトで図形を並べるときに出てくるような参照線がマウスの動きとともに表示されるようになりました。ちょっとした作図の効率がグンと上がりそうです。
BIMモデルにテクスチャーや材質感を設定する作業も、材質のパレットから3Dモデル上にドラッグ・アンド・ドロップする感覚で効率的に行える「3D材質ペインター」という機能が搭載されました。
このほか、建具などは設計の進行に伴って徐々に詳細な属性情報を入力していったり、一覧表機能が強化されたり、注釈やラベルを読みやすく配置したりといった機能が追加されました。
グラフィソフトでは、BIMの共通データフォーマット「IFC」を使って他社のBIMソフトとも積極的に連携する「OPEN BIM」という考え方を提唱しています。
ArchiCAD 19では、それを強化する機能としてBIMソフトごとにIFC読み込みを最適化する「IFCトランスレーター」を増強し、円滑にIFCによるデータ交換ができるようにしました。
そして、今回のバージョンアップで搭載された新機能のうち、特筆すべきものは
点群データの読み込み機能
です。
ライバルのBIMソフト「Revit」は数年前から点群データの読み込みができるようになっていましたが、ついにArchiCADでも点群が扱えるようになったのです。
最近、ArchiCADは施工や工場製作の分野でも使われる例が多くなってきただけに、点群データとの連携機能はその動きをますます加速させそうですね。