清水建設がトンネル現場をデジタルツイン化! AIによる崩落監視も実現へ
2021年1月26日

管理人のイエイリです。

自然の山と人間が直接向き合いながら仕事する山岳トンネルの工事現場では、掘削最先端(切羽)」付近での落盤や落石などの「肌落ち」による事故防止が極めて重要です。

これまではベテランの切羽監視員を常駐させて、肌落ちの前兆現象となるクラックの発生を監視していました。しかし、目視での監視のため、発見の遅れや見落としも一定割合で発生することは否めませんでした。

切羽監視員による肌落ちの監視イメージ(資料:LeapMind)

そこで切羽監視員の仕事をサポートしようと、清水建設とLeapMind(リープマインド)(本社:東京都渋谷区)は、切羽監視支援システムの実証実験を開始しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

AIでクラック発生を検出

してくれるシステムなのです。(LeapMindのプレスリリースはこちら

AIでクラックを検出する切羽監視支援システムのイメージ図(資料:LeapMind)

このシステムは、切羽付近にカメラを設置して常時撮影し、その画像をパソコンでリアルタイムに解析して、肌落ちなどの前兆を検知するものです。

異常を検知したときは、切羽監視員のタブレット端末にその情報を伝達します。

そして切羽監視員はその情報をもとに現場の状況を確認し、必要があれば警報器を発報させます。

クラックの検知には、AI(人工知能)のディープラーニング技術を活用した「セマンティック・セグメンテーション」という手法を採用しました。

※セマンティック・セグメンテーション=画像内の全画素に人、岩、クラックなどのラベルやカテゴリーを付けて認識する手法

ディープラーニングでは、数多くの画像をシステムに学習させる必要があります。

しかしクラックの発生頻度は低いため、疑似的にクラックを模したデータを作成して学習させました。その結果、実際の現場と同等の状況でもクラック発生を検知できることが確認できました。

今後は実用化を目指し、精度の高いディープラーニングモデルを構築するほか、切羽監視員をこのシステムでサポートする運用フローの実現を目指すとのことです。

清水建設はこのシステムとは別に、切羽断面の振動をレーダーで観測する「切羽崩落振動監視レーダーシステム」や、赤外線カメラや点群データを使って作業員の安全管理を行う「行動モニタリングシステム」、そしてタブレット端末を利用して発注者がリモートで立会検査を行う「リアルタイム遠隔立会システム」などを開発しています。

切羽崩落振動監視レーダーシステム(以下の写真、資料:清水建設)

行動モニタリングシステム

余掘り量低減システム「ブラストマスタ」

リアルタイム遠隔立会システム

これらはICT(情報通信技術)やAIなどの最新技術を活用した次世代型トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」を構成する要素技術として着々と開発されてきました。

その結果、気がつけばシステム開発はトンネル現場全体の施工管理をカバーするまでになり、トンネル現場を

デジタルツイン化

するまでに拡大しています。

トンネル現場全体をデジタルツイン化する次世代トンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」の全体イメージ。2020年度中の完成を予定している

「シミズ・スマート・トンネル」は2020年度中の完成を予定しています。トンネル工事はこれまで、土木工事の中でも典型的な経験工学として、経験・勘・度胸の“KKD”に支えられてきましたが、知らず知らずのうちにデジタルツインの域まで進化していたようです。

AIやタブレット、パソコンを駆使するトンネル現場は、土木工事のイメージを大きく変えそうですね。

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