鹿島が成瀬ダム現場の“工場化”を達成! 回転パイプ、無人後進ダンプで材料搬送を完全自動化
2023年10月17日

管理人のイエイリです。

鹿島では、ダムやトンネルなどの土木工事を対象に、ダンプトラックやブルドーザー、振動ローラーなど建設機械の自動運転をベースにした自動化施工システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)を開発し、2015年から6件の現場で導入してきました。

秋田県東成瀬村で同社が施工する成瀬ダム堤体打設工事(国土交通省発注)の現場でも、2020年度からこのシステムを導入し、固いコンクリート状の堤体材料(CSG)を自動ブルドーザーによってまき出し、自動振動ローラーで締め固める作業を行ってきました。

A4CSELによる自動化施工を行う成瀬ダムのイメージ(以下の資料、写真:鹿島)

A4CSELによる自動化施工を行う成瀬ダムのイメージ(以下の資料、写真:鹿島)

実際の現場状況。堤体材料はベルトコンベヤー、SP-TOMを通って現場に運搬され、最後に自動ダンプトラックに積み込まれる

実際の現場状況。堤体材料はベルトコンベヤー、SP-TOMを通って現場に運搬され、最後に自動ダンプトラックに積み込まれる

そしてこのほど、堤体材料の製造から現場への運搬・荷降ろし作業が完全自動化されたため、

ナ、ナ、ナ、ナント、

“現場の工場化”

がついに実現したのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

“現場の工場化”には、大きく2つのポイントがあります。

1つ目は、ベルトコンベヤーでダム右岸の上端に運ばれてきた堤体材料を、打設が行われている低いところまで連続的に流して下ろす「SP-TOM」 (Special Pipe Transportation Method)という装置の導入です。

この現場で使われている堤体材料のCSGとは、石や砂れきなどの現地発生材に、セメントと水を混合して作った材料で「カチコチな生コン」状のものです。

コンクリートと同様に高いところからパイプで流すと、材料が分離してしまいます。そこで、SP-TOMではパイプの中に羽根が仕込んであり、これで材料を小刻みに受け止めながら下ろすことで分離を防いでいます。

コンクリート状の材料を分離させずに高所から低所に流す「SP-TOM」の全景。写真は湯西川ダムの現場で使われたもの

コンクリート状の材料を分離させずに高所から低所に流す「SP-TOM」の全景。写真は湯西川ダムの現場で使われたもの

回転する搬送管の内部には羽根が仕込んであり、材料を小刻みに受け止めながら下に下ろしていく

回転する搬送管の内部には羽根が仕込んであり、材料を小刻みに受け止めながら下に下ろしていく

2つ目のポイントは、SP-TOMから打設場所までのダンプトラックによる材料運搬を自動化したことです。

前進状態でSP-TOMの下部に突っ込んだ55t積み自動ダンプトラックは、計量ホッパーで一定量の材料を積み込んだ後、打設場所までそのまま

最大600mを自動後進

して、材料をダンプ。そのまま前進で戻ってくるのです。

形はダンプトラックですが、工場内で黙々と材料を供給する往復台車のような動作です。

写真中央の自動ダンプトラックは運転席を後方のSP-TOMに向けたまま、往復する

写真中央の自動ダンプトラックは運転席を後方のSP-TOMに向けたまま、往復する

人間が運転する場合は、長距離のバック運転は難しいので、往復のたびに「切り返し」によって180度ターンするところです。自動運転で切り返しを亡くすことで、走行時間や距離を大幅に短縮できました。

指定された荷下ろし位置までの経路は、システムが自動的に生成し、荷下ろし位置の精度は±50cmです。適切な位置に荷下ろしすることで、後続作業のブルドーザーによる敷きならしもムダなく行えますね。

成瀬ダムでは自動ブルドーザー、自動振動ローラー、自動ダンプトラックなど合計14台の自動化建機が稼働しています。

これら建機は驚くべきことに、現場から約400km離れた神奈川県内の鹿島西湘実験フィールドに設置した遠隔管制室にいる3人の「ITパイロット」が制御し、2交代制で昼夜連続施工を行っているのです。

成瀬ダムの建機を鹿島西湘実験フィールドの遠隔管制室で制御するITパイロットたち

成瀬ダムの建機を鹿島西湘実験フィールドの遠隔管制室で制御するITパイロットたち

現場で重作業を行う巨大な実物建機を、まるでテレビゲームのように遠隔操作するとは、カッコよすぎますね。

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