管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設計・施工のワークフローでは、各部門が一つのBIMモデルを共有しながら、基本設計が終わったら詳細設計へ、そして施工へとシームレスに業務が進んでいきます。
そんな中、新たな「手戻り」の問題も浮上してきました。例えば、下の図は意匠設計中のBIMモデルですが、壁の設計は決まっているものの、ドアは検討中だったとします。
そんな状況だとは知らず、資材調達の担当者が施主の要望に合わせてドア部材の発注を進めてしまうと、後でドアの種類や高さが変わって、発注作業の手戻りが生じてしまうのです。
こうした手戻りを防ぎ、「使えるBIM」を実現しようと、大林組、トランスコスモス(本社:東京都渋谷区)、応用技術(本社:大阪市北区)は、BIMソフト「Revit」用にモデル各部の設計確定具合度を可視化する「Smart BIM Connection」というシステムを開発しました。
各部材の設計がどれだけ進んでいるのかをLOD(進展度:Level of Development)で定量的に定義するとともに、
ナ、ナ、ナ、ナント、
リアルタイムな属性情報
として、BIMモデル内で確認できるようにしたのです。(トランスコスモスのプレスリリースはこちら)
これまではBIMモデル各部の進展度をプロジェクトのメンバー間で共有するのに、言葉や文章によるあいまいな表現が使われてきましたが、部材ごとにリアルタイムなLODでわかると情報伝達も端的かつ正確になりますね。
LODはこれまで、企画レベルが「100」、基本設計レベルが「200」、施工レベルが「350」などキリのよい数字で表現されてきましたが、このシステムでは、「133」とか「166」など、検討の進展度合いに合わせてさらに細かく表現できるようになっています。
各部材のLODの値は、部材と連動した「ステータス管理」の画面上で「Good」ボタンや「OK」ボタンをクリックすると、高まるようになっています。
BIMソフト上では、現在のLODを部材ごとに色分け表示できますので、どの部材のデータは使えるか、どの部材はもう少し待った方がいいのかがひと目でわかります。
各部材のLODをBIMモデル全体で集計して、設計の進捗(しんちょく)率として表示することもできます。
さらに、クラウド時代ならではの機能として、社内で進行中の
複数のプロジェクトの進捗
を計画と実績でグラフ表示することもできるのです。
このシステムはトランスコスモスと応用技術が共同展開する、Revit用のアドオンアプリとクラウドサービスのパッケージ商品「toBIMサービス」を通じて、2021年5月10日からトライアル利用の受け付けを開始し、同9月1日から販売を開始します。
このシステムの開発に当たり、海外にLODを属性情報的に管理するシステムはないかと調査したところ、見つからなかったそうです。
世界に先駆けたシステムが登場するとは、日本のBIMも独自の進化を遂げつつあることが実感できますね。