管理人のイエイリです。
住宅のように高価な製品は、ユーザーが製品の存在を知ってから実際に購入するまで、長いプロセスが必要です。
このプロセスは、古典的なマーケティング理論で(1)Attention(注意)→(2)Interest(関心)→(3)Desire(欲求)→(4)Memory(記憶)→(5)Action(行動)と分析されており、それぞれの頭文字を取って「アイドマ」(AIDMA)と呼ばれています。
住宅展示場では、できるだけ多くの見込み客に来てもらう必要があるので、景品やイベントをよく行っています。しかし、中には“冷やかし”や“景品目当て”のお客さんもいるので、手間ひまかけて接客しても空振りに終わってしまう場合もあります。
一方、真剣に住宅を探しているお客さんがいても、地元の住宅展示場にはお客さん好みの住宅がない場合は、アイドマのプロセスにすら入れません。また、昨今のコロナ禍で、住宅展示場に足を運ぶことにも、ためらいがありますね。
住宅展示場にまつわる、こうしたミスマッチを解決しようと、野原ホールディングスは2021年4月22日から「in TOWN Cloud」というサービスを開始しました。
住宅展示場にある実物の住宅を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
MatterportでVR化
し、ネット上でお客さんにウォークスルーしてもらうサービスなのです。(野原ホールディングスのプレスリリースはこちら)
Matterport(マーターポート)とは、3D赤外線センサーを使って周囲360°をぐるりとカラー点群で撮影する機器です。
住宅の要所要所をMatterportで撮影し、それをつなぐと3D空間をウォークスルーするVR(バーチャルリアリティー)コンテンツが作れます。
このVRをウェブサイトで公開することで、見込み客は24時間365日、いつでも自由に内部を見学することができるのです。
実際の住宅展示場では、台所やバスルームで水を流したりするのは難しい場合もありますが、VRなら実際の使用状況を撮影した動画コンテンツを流すこともできます。
また、単にウォークスルーするだけだと、飽きてきてしまいますが、このシステムでは親しみやすい「セールスボット」もアテンドし、お客さんが見たいところを聞いたり、普段の生活について質問したりしてくれます。
お客さんにとっては自宅などから好きな時間に、三密や営業マンを気にすることなく、全国各地の住宅展示場を見て回ることができます。住宅展示場にとっては人件費を節約して、より多くの見込み客を集められるというメリットがあります。まさにWin-Winですね。
それだけではありません。お客さんがウォークスルーした足跡は、
アクセス分析
され、どこに興味があるのかを事前に把握できるのです。
こうしたVR体験の後、本当に興味を持ったお客さんは、資料を請求したり、住宅展示場への訪問を予約したりします。
気になるお値段ですが、MatterportでのVR撮影や編集などは、1棟当たり11万円(交通費、クラウド使用料は別途)となっています。
また、住宅展示場VRサービスの利用料はアクセス分析込みで1棟当たり1万6500円(税込み)で、セールスボットは別料金となっています。
これまでの住宅展示場で問題となっていた「アイドマ」の前半の部分をVRが受け持つことで、幅広い見込み客を集めるのと同時に、冷やかし客などをふるい落とすことができるので、ムダのない営業活動ができます。
まさにネットとリアルの「いいとこ取り」をした、住宅展示場の「アイドマDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」と言えそうですね。