管理人のイエイリです。
都市が抱える様々な問題を、ICT(情報通信技術)などを活用して解決し、最適な運営管理を行う「スマートシティー」を実現するためには、街や建物をデジタル空間で再現する「デジタルツイン」の活用が欠かせません。
そこで東京大学と民間機関の研究コンソーシアム「東京大学グリーンICTプロジェクト」(以下、GUTP)と、NTTコミュニケーションズは、2021年3月から建物空間のデジタルツイン実証実験を行ってきました。
この実験では、建物の点群データからのBIMモデル作成や、属性データやテクスチャー情報の自動取得、建物内センサーの位置とBIMモデルのひも付け、ロボットとビル内カメラの連動アプリの開発に取り組みました。
その結果、デジタルツインから
ナ、ナ、ナ、ナント、
現実空間を“逆制御”
するアプリケーションを開発することに成功したのです。(GUTP、NTTコミュニケーションズのプレスリリースはこちら)
2021年4月にNTTコミュニケーションズが東京・港区に開設した共創施設「CROSS LAB for Smart City」で、基礎的なデジタルツイン・アプリケーションを作成し、リアル空間にあるロボットやビル設備システムを、デジタルツインからリアルタイムに制御する実験を行ったものです。
この実験では、リアル空間の運搬ロボットや照明を、ゲームエンジンによってデジタルツインからリアルタイムに遠隔操作することに成功しました。
さらにビル設備との通信ゲートウェイである「Software Defined GW」と連携した照明制御や、インテリジェントビルの設備制御用ネットワーク規格「BACnet」と連携した空調制御も行いました。
今回の実験には、日建設計や大塚商会、神田通信機、セコム、竹中工務店TISも参加しました。
今後、GUTPや参加企業は、建物から収集するデータの活用手法の標準化に向けた取り組みを行い、建物や都市の
デジタルツインを活用
したスマートシティーの実現を目指します。
さらにNTTコミュニケーションは、2022年度に他の都市でも同様の実験を行い、複数の空間をまたいだ制御やデータ利活用の検証を行って、広域都市空間でのデジタルツイン活用に関する検討も進めていく方針です。
これまでデジタルツインというと、まず現実の建物や現場があり、それをデジタルデータで再現したものというイメージがありました。つまり、現実空間が先行し、デジタルツインが後を追う、というイメージです。
しかし、今回、GUTPやNTTコミュニケーションが開発したロボットやビルの制御技術は、デジタルツインが先行して現実空間が後を追う、という逆のパターンになっているのが画期的ですね。
今後のスマートシティーは、デジタルツイン上のデータをICTやAIなどが解析して「現実空間のあるべき姿」を導きだし、それに従って現実が制御される、という感じになるのでしょうか。
現実空間とデジタルツインを、リアルタイムに対応させる技術の進化を感じた次第です。