管理人のイエイリです。
山岳トンネルでは、大量の出水が予想される湧水隊や、岩盤がもろくなっている破砕帯の位置や幅を、できるだけ早く把握し、岩盤の補強などの対策を行うことが求められます。
その重要な武器が弾性派探査です。
トンネルの最前線である「切羽(きりは)」で探査用の小規模な発破を行って人工地震を起こし、その反射波によって前方の地山に破砕帯などがないかを調べる方法です。
ところがトンネルを傷めないように火薬量の制限があったので、探査できる距離は最大でも切羽前方の150m程度でした。
そこで大成建設は、従来の2倍以上となる切羽前方350mまで、地山状況がわかる長距離探査法「T-BEP(=Blast Excavation Prospecting)」を開発し、効果を確認しました。
探査距離が大幅に伸びた秘密は、人工地震を発生させるのに
ナ、ナ、ナ、ナント、
パワフルな掘削用発破
を使っているからなのです。(大成建設のプレスリリースはこちら)
これまでの地盤探査は、毎月1回程度、現場の掘削を終日止めて、探査用発破の削孔・装薬・発破を行っていましたが、「T-BEP」だと日常の掘削を行いながら地盤探査が行えます。
また、反射波を高感度で精度よく受信できるようにするため、発破の時間間隔を調整し、受信装置の設置方法にも改良を加えました。
このシステムを、福井県内の荒島第一トンネル(発注者:国土交通省近畿整備局)現場で検証した結果、
350m先の破砕帯
を発見することができました。
その後、掘削を進めていくと、実際にその場所に破砕帯があることがわかりました。
今回、開発された長距離探査法は、従来の探査法に比べて、早期に切羽前方の地質を把握できるので、4カ月程度先まで長期のトンネル施工計画を立てられるようになります。
昔は“KKD”(経験・勘・度胸)がものを言う、経験工学の代表格だった山岳トンネルですが、最近はあらかじめデータをできるだけ集めて、事前に対策を練る「データドリブン」な施工管理が進んできましたね。