管理人のイエイリです。
最近、「建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉をよく聞きますが、いったい何をやればいいのだろう、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、どうDXに生かしていくべきか、などとお悩みの経営者や技術者の方も多いでしょう。
こうしたお悩みの解決に役立ちそうなのが、設備工事大手の高砂熱学工業が2021年12月10日に発表した「DX戦略 ~行こう、未来へ TakasaGO!DX~」(以下「DX戦略」。PDF版はこちら)です。
このDX戦略で、同社は「環境クリエイター」として、長期的な事業の持続可能性を持ちながら、空調技術と環境技術を提供する方向性を打ち出しています。
これを実現するためのデジタル基盤の1つとして、
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMで事業プロセスの変革
を目指しているのです。
BIMモデルは、建物の企画・設計から施工、維持管理まで、建物のライフサイクル全体のデータを一元管理するプラットフォームとして活用し、顧客に新たな付加価値を提供することを目指しています。
具体的には、設計の自動化やフロントローディング、デザインやCO2排出量の見える化、BIMと施工ロボットとの連携などです。
また、同社のオフサイト生産プラットフォーム「T-Base」のセントラル生産システムを活用して、施工のプレハブ化やユニット化による品質と生産性の向上も目指しています。
このほか、建物の運用段階では、実物の建物や太陽光発電施設などのデータとBIMモデルなどを連携させて「デジタルツイン」を構築し、建物の省エネや省CO2支援サービス、最適運転のほか、シミュレーションによって将来の故障や変化を予測する高次元な設備運用を目指しています。
BIMのほか、同社のDX戦略を支えるデジタル基盤として、脱炭素化に向けたマネジメントシステム(FMS/EMS)、基幹システムのアップデート(ETHOS)、情報セキュリティの強化(SIEM)もあります。
こんな複雑で巨大化したDXを継続的に発展させていくためには、従来の情報システム部門的な発想だけでは不十分です。
そこで、高砂熱学は、ビジネスとデジタルの両面のスキルを併せ持つ“人財”を
高砂デジタル・イノベーター
と名付け、神戸大学 数理・データサイエンスセンター(CMDS)などと連携して育成していくことにしています。
具体的には、「R」や「Python」などの統計解析用プログラミング言語やデジタルツールを使いこなせる若手を中心に育成していきます。
はっきり言って「スーパーマン」のような人財ですが、デジタルネーティブな世代の中には、既にデジタル面のスキルや考え方を身に着けた人は意外に多いのかもしれせん。後はマネジメント力などビジネス面をちょっと鍛えれば、建設DX時代の人財を育成できるのかもしれませんね。
高砂熱学では、DX戦略を4つのステップに分け、来年度からいよいよ実践フェーズへと入り、最終的に「環境クリエイター」の実現を目指します。
建設DXと言うと、どうしてもハードやソフト、クラウドを導入することばかりを考えてしまいます。しかし、ゴールがあいまいだと、実践にも力が入りませんね。
高砂熱学のように「自社が目指すべき姿」をはっきり定義し、そのプロセスにある「お困りごと」を解決するために、BIMや人はどう使うべきかを考えていくと、地に足のついた建設DXへの道が描けそうです。