山岳トンネルの地山圧力を遠隔監視! 大林組が支保工用に「ハカルーター」を開発
2022年8月19日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事では、地山からの圧力が過大でないかを常に監視し、安全性を保つことが重要です。

目に見えない地山の圧力を把握するため、トンネル内面を支える「鋼製支保工」というアーチ状の鋼材に、ひずみゲージを取り付け、その値を計測する方法が使われています。

しかし、掘削最前線の「切羽」に設置したばかりの支保工に、ひずみゲージを取り付けて配線を行うのは、危険な作業でした。

そこで大林組は、

ナ、ナ、ナ、ナント、

ひずみゲージに送信機

を取り付け、ひずみデータをワイヤレスで計測できる「ハカルーター」を開発したのです。(大林組のプレスリリースはこちら

鋼製支保工のひずみをワイヤレスで計測できる「ハカルーター」の概念図(以下の資料、写真:大林組)

鋼製支保工のひずみをワイヤレスで計測できる「ハカルーター」の概念図(以下の資料、写真:大林組)

現場に設置したハカルーター。ワイヤレスなので配線作業が不要。切羽から離れた場所で安全に計測できる

現場に設置したハカルーター。ワイヤレスなので配線作業が不要。切羽から離れた場所で安全に計測できる

ハカルーターの機器一式

ハカルーターの機器一式

ハカルーターは計測データをワイヤレス伝送する「送受信機」と、受信データを表示する「計測用タブレットPC」、そしてひずみが規定値を超えた場合に警告を発する「警告灯」で構成されています。

ひずみゲージや送信機は、あらかじめ鋼製支保工に取り付けておくことができるので、切羽付近での配線作業は不要です。

支保工を切羽に建て込んだ直後からひずみを計測で、送信機と受信器の距離は、最大50mまで離せるので、安全に計測できます。また、1台の計測用タブレットPCで複数の計測データを一元管理できます。

1つの支保工に複数のひずみゲージや送信機を付けた例。データは1台の計測用PCで一元管理できる

1つの支保工に複数のひずみゲージや送信機を付けた例。データは1台の計測用PCで一元管理できる

もし、ひずみや応力が規定値を超えた場合は、計測用PCに付属の警告灯から光と音でアラームを出し、周囲の作業員に危険を知らせます。

送信機のバッテリーは約1カ月もつので、支保工の変形が落ち着くまで、継続して計測できます。

しかも、送信機は繰り返し使用できるので、ひずみの計測に要する費用は、

従来より2割程度削減

できます。

掘削直後からのひずみデータを、過去の計測データと比較すると、将来のひずみも予測できます。

そのため、早い段階で「これは管理基準値を超えそうだ」ということがわかれば、支保工を増やすなどの対策を事前に講じることができます。

切羽の掘削後、早期に将来のひずみを予測するイメージ

切羽の掘削後、早期に将来のひずみを予測するイメージ

今回、開発した「ハカルーター」は、大林組が山岳トンネル工事の生産性向上を目的に開発中の統合システム「OTISM(Obayashi Tunnel Integrated SysteM)」で、データ収集を担う「モニタリング」技術となるものです。

山岳トンネル工事の生産性向上を目的とする「OTISM」のモニタリング技術。データドリブンによる意思決定が可能になる

山岳トンネル工事の生産性向上を目的とする「OTISM」のモニタリング技術。データドリブンによる意思決定が可能になる

ハカルーターが現場にあれば、トンネル掘削後の見えない圧力も「KKD(経験・勘・度胸)」に頼ることなく、計測値に基づいた「データドリブン」による施工管理が行えるので、安心ですね。

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