管理人のイエイリです。
昨日(2022年11月8日)、東京都内でBIMソフト「Archicad」の開発元であるグラフィソフトのCEO、ヒュー・ロバーツ氏(Huw Roberts) が来日し、同社の今後の経営方針について記者会見を行いました。
「建物は単なる箱ではなく、建物のユーザーに大きな影響を与えるものだ。多くの専門家の力を結集して、人のためになる建築を実現し、世界をよくしていきたい」と、ロバーツ氏は語ります。
そしてロバーツ氏は、複数年にわたる製品についてのロードマップを示しながら、「コロナ後の様々な課題解決には、多くの専門家がデザインチームとなり、一つのBIMモデルを共有しながらタイムリーに仕事を進めていくことが重要だ」と力説しました。
そこで私が「問題解決のポイントとなる、同社のソリューションは何か?」と質問したところ、ロバーツ氏は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMcloud
と、回答したのです。
BIMcloudとは、同社の旗艦製品である「Archicad」のBIMモデルをクラウド上に置き、複数の設計者が同時にアクセスしながら共同で設計作業を進めていくクラウドソリューションです。
たしかにBIMcloudは、クラウド上で多くの専門家が結集し、よい建物を設計するために欠かせないインフラといえそうですね。
こうした幅広い視点が生まれたのは、ロバーツ氏のこれまでの経験に起因しているようです。
同氏はテンプル大学で建築を学んだあと、建築設計者として十数年、建築設計の実務を経験しました。
そのときの経験で、建築設計におけるソフトウエアの重要性に気づき、ソフト業界に転身しました。特に「MicroStation」など技術系のBIMに強いベントレー・システムズでは、18年にわたって活躍し、マーケティング担当の副社長などを務めました。
そして、2019年にグラフィソフトCEOに就任した翌年には、世界的なコロナ禍に見舞われ、同社も全面的にテレワーク環境に移行しました。
そのときもロバーツ氏は落ち着いて、自宅にテレワーク用のオフィスを設ける様子などをFacebookに投稿しています。
テレワークを自ら体験したロバーツ氏だからこそ、「BIMcloud」の潜在力を認識し、今後の軸として位置づけているのでしょう。
グラフィソフトと言えば、Archicadをはじめとして、意匠設計用ソフトが強い印象でしたが、ロバーツ氏の就任以降、意匠設計以外のソリューションも広がりつつあるようです。
その一つが、空調衛生設備や電気設備の詳細設計に対応した
DDScadの買収
です。
2022年10月8日には、グラフィソフトが設立したGraphisoft Building Systems社が最新版となる「DDScad18」を発売しました。
このソフトには、設備設計のほか木造住宅のプレハブ化に対応した機能も含まれているので、今後、グラフィソフトが施工分野にも守備領域を広げていく可能性もあります。
ロバーツ氏は建設業界で様々な仕事を経験し、多くの建設関係者の仕事を見てきました。同氏が率いるグラフィソフトは今後、どんな成長戦略を展開するのでしょうか。