管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事の工程のうち、最も自動化が難しいものの一つが吹き付けコンクリートです。
発破で掘削した後の岩盤面は、どうしても複雑な凹凸が生じます。
その上から吹き付けコンクリートを施工して、平らな面に仕上げるためには、凹凸の程度を見極めて吹き付けコンクリートの量を調整する必要があり、まさに“名人芸”が求められるのです。
鹿島はこの熟練が必要な吹き付けコンクリート工を自動化する「自動吹き付けシステム」を開発し、岐阜県飛騨市で施工中の「神岡試験坑道」の現場に導入しました。
“名人芸”を自動化するために使ったのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
3Dスキャナー
だったのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
掘削直後にトンネル断面に沿って、3Dスキャナーで岩盤の凹凸を点群計測します。
この点群データをもとに、吹き付けコンクリートを施工する鋼製支保工間の部分を小ブロックに分割して、各部の吹き付け厚さを割り出し、吹き付け計画を作成します。
この吹き付け計画を、自動吹き付け機の制御プログラムに入力し、自動吹き付けを行います。
吹き付け計画では、小ブロックごとに吹き付けノズルの移動速度やノズル角度、吹き付け回数を設定します。これらを機械的に制御できるプログラムによって、施工中のトンネルでも精度の高い自動吹き付けが可能になりました。
気になる精度ですが、隣り合う支保工間での仕上がり面は、
標準偏差±20mm
という高精度での施工が実現しました。
山岳トンネル工事については、大手建設会社などが無人化、自動化に向けた技術開発にしのぎを削っています。
鹿島も「A4CSEL for Tunnel」という自動化施工システムの開発を、6つの施工ステップに分けて進めてきました。
“経験工学の典型”と言われてきた山岳トンネルの工事が、無人化される日も遠くはなさそうですね。