管理人のイエイリです。
秋田県東成瀬村では、国土交通省東北地方整備局発注の成瀬ダム現場で、堤体のコンクリート打設工事が行われています。
コンクリートと言っても、ここで使われているのは現地発生の石や砂れきとセメント、水を混合したCSG(Cemented Sand and Gravel)というカチカチの材料です。
これをダンプで現場に運び、ブルドーザーで層状に敷きならし、振動ローラーで締め固めて堤体を固めていくのです。
ダムはいかにも重々しく、頑丈な感じなので、とても変形などしないようなイメージですが、ダム堤体上部に打設したコンクリートは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
反り上がる
ことがあるのです。(鹿島のプレスリースはこちら)
反り上がりの結果、層状に打設したコンクリートの水平打ち継ぎ部にひび割れが入るという問題がありました。
この反り上がりは、堤体内の温度差による温度応力が主な原因と言われていますが、その発生時期や反り上がりの規模は工事ごとに異なり、有効な制御方法もありませんでした。
また、上部に打設したコンクリートが打設面に覆いかぶさるため、発生したひび割れの有無さえも確認できないことがあったのです。
成瀬ダムの堤体コンクリート打設を行った鹿島は、この反り上がり挙動をなんとか計測できないかと知恵を絞りました。
その結果、たどり着いたのは、堤体内でコンクリートの水平打ち継ぎ目を貫通するように、高性能光ファイバーを設置するという方法でした。
専用の計測機を使って光ファイバーの入射光と散乱光を分析すると、ひずみや温度変化、振動を計測できます。
この方法を成瀬ダムの現場で使ったところ、見事にコンクリートの反り上がりによるひずみをリアルタイムに計測できたのです。
反り上がりによるひずみが増大する時期や状況を見える化できたのは、業界初とのことです。
今回、鹿島らが開発した技術は、計測精度や計測時間を大幅に向上させたもので、
光ファイバー計測に“革命”
をもたらすものと言っても、過言ではありません。
具体的には、ひずみ精度が従来、50μだったのがわずか1μになり、計測時間は数分かかっていたのが数秒に短縮されたのです。
その結果、様々な現場で工事中、完成後の供用中にかかわらず、光ファイバー計測によって構造物内部のわずかな挙動をリアルタイムに「見える化」できるようになったのです。
今後、光ファイバー計測を使った構造物管理の「ダッシュボード」が、いろいろと登場しそうですね。