管理人のイエイリです。
施工管理者に求められるのは、設計や施工で使われる専門的な知識だけではありません。
時々刻々と変わる現場の状況を見て、「安全管理上、問題のある箇所はどこか」を見つけたり、「将来、どんなトラブルが発生しそうか」を予測し、事前に手を打ったりする“気づく力”がとても重要なのです。
そこで中堅ゼネコン8社とコンピュータシステム研究所は、ゼネコンの若手社員に施工管理の様々なノウハウをスピーディーに教育するシステム「現場トレーナー」を開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
工事現場をBIMモデル
で再現し、事故や不具合をバーチャルに体験しながら、“気づく力”を特訓するシステムなのです。(コンピュータシステム研究所のプレスリリースはこちら)
BIMモデルで再現したバーチャル工事現場には、わざと問題点が仕込まれています。
施工管理を学ぶ若手社員は、パソコンやタブレット端末のiPadの画面上で現場を歩き回りながら、問題点を見つけるとともに、将来、起こりうる事故や不具合を予測するトレーニングを行います。
また、現場で突発的に発生した問題に、ベストな対応をするための判断力も鍛えられます。
例えば、鉄筋の搬入が予定していた15時から1時間遅れる見込みのため、後続する解体作業と重なってしまったという場合です。
どちらもクレーンを使うので、同時作業はできません。遅れた鉄筋工が悪いので今日の作業はあきらめさせるのか、または解体工の作業を予定より早めてもらうように頼むか、それとも鉄筋工やクレーンオペには残業で対応してもらうか、「さあ、あなたはどうする?」という判断が次々と迫られます。
この場合の正解は、「解体工に作業を1時間、前倒ししてもらうように頼む」ということでした。そのあと、遅れてきた鉄筋工が作業すれば、だれも残業しなくて済みます。
しかし、こうした急な作業の変更がお願いできるのも、日ごろ、解体屋さんやクレーンオペなどとの良好な人間関係があってこそです。
もし、これらの人々との関係が悪いと、急な作業予定の変更を拒否され、それが工期の遅れにつながることになってしまいます。工程管理はバーチャートやネットワーク工程表を作るだけでないということを、実感できそうですね。
ひと通り学習ステージで学んだ後には、ドリルのような問題が出題されるステージがあり、解答や解説によって理解度を確認できます。
そして、社内の教育担当者には、各社員の
学習の進ちょく管理
が行えるユーザー管理機能が用意されています。
誰がどこまで学習やドリルを行ったかや、学習時間などを一覧表で把握できるほか、進ちょくが遅れている社員には受講を促すメールを送信する機能なども用意されています。
「現場トレーナー」は2017年に淺沼組でプロトタイプの開発が始まり、その後、ゼネコン8社による共同開発と実証実験を経て、2022年4月にコンピュータシステム研究所が加わって本格的な開発が始まりました。
●「現場トレーナー」の開発企業
青木あすなろ建設(本社:東京都千代田区) |
2023年5月から、コンピュータシステム研究所 イノベーション事業部(TEL 03-5363-0650、FAX 03-5363-0651)から、Windows版とiPad版がサブスクリプションによって提供されます。パソコンは特にハイスペックなものでなくても大丈夫です。
今後も毎年、アップデートし、新しい現場コンテンツが追加され、特別な教育コンテンツの開発にも対応可能とのことです。
これまでは、実際の現場で様々な業務を経験していく中、先輩の指導を受けながら、“気づく力”を持った施工管理者を育てていました。
しかし、そんな気長な教育体制では間に合わないという建設会社の方は、「現場トレーナー」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。