管理人のイエイリです。
人手不足に悩む建設業の様々な問題を、建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)で解決するための“米”とも言えるのがBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)です。
2023年度は国土交通省の設計・工事でBIM/CIMが原則化されたほか、80億円もの国費を投入する「建築BIM加速化事業」も行われ、BIM活用はますます広がっていきそうです。
一方、課題となっているのは、設計や工事の発注者のBIM活用が遅れていることです。しかし、設計者や施工者に比べて、建築の専門知識を持たない発注者にとって、BIMを理解し、効果的に活用するのは難しい面がありました。
そこで、日建設計はこのほど、発注者目線でBIM活用のメリットをわかりやすく解説した「BIM活用ガイドブック」を制作し、無料公開しました。(正式名称は「BIM USES DEFINITIONS Vol.1 BIMを活用するプロセスやタスク やさしいガイドブック」)
ガイドブックの表紙には、これまでのBIMのイメージとは違った親しみやすい21個のイラストがちりばめられています。
これらは、発注者がBIMを利用する上で欠かせない、
ナ、ナ、ナ、ナント、
21種類の利用方法
を表しているのです。(やさしい「BIM活用ガイドブック」のダウンロードサイトはこちら)
例えば、表紙の左上隅にあるイラストは、発注者にとってのBIM利用方法の1つである「現況のモデリング」(略称:EC=Existing Conditions Modelling)を表しています。
現状の敷地や既存建物を3次元のBIMモデルで表すことで、発注者は現地の状況を把握しやすくなります。そのためには3Dレーザースキャナーや点群操作ソフトなどが必要で、成果品には3D点群データや既存現場の外形モデルなどがあります。
こうした基本的な効果や関連するハード・ソフト、考慮すべき精度などが21種類の利用方法についてわかりやすく解説しているのです。
また、建物の種類によって、BIMの利用方法も変わってきます。このガイドブックでは、日建設計の業務実績をもとに12種類の建物用途を選び、それぞれどのような優先順位でBIMの利用をすべきかを解説しています。
例えば、オフィスビルだと「資産管理(AM)」や「維持管理(BM)」の優先順位が高くなりますが、病院の場合は「空間検討(SP)」や「設計レビュー(DR)」、「災害対策(DP)」、「エンジニアリング分析(EA)」の重要度が高くなります。
これらの利用方法のうち、設計や施工に関する部分は建築設計事務所や建設会社によってかなり実践されてきました。
一方、今後、発注者ならではの利用方法として期待されるのは、完成した建物をBIM化する「記録モデルの作成(RM)」以下の「資産管理(AM)」、「維持管理(BM)」、「建物設備の分析(BS)」、「スペース管理と追跡(SM)」、「災害対策(DP)」です。
これらは
デジタルツイン
による建物の運用・維持管理を示しているものと言えるでしょう。
このほか、発注者が業務でBIM利用を行うために役立つBIM関連資料の数々も紹介されています。最近は、日本建設業連合会の「施工BIMのすすめ」など、無料でダウンロードできる資料も多いので、参考文献もすぐに利用できそうですね。
このやさしいBIMガイドのもとになったのは、ニュージーランドのBIM団体、BIMinNZがまとめた「The New Zealand BIM Handbook」や付録資料の「Appendix D BIM USES DEFINITIONS」がもとになっており、日本のBIM事情に合わせて翻訳やイラスト化が行われたものです。
これまで、BIMは専門用語が多くてわかりにくいとお悩みだった産官学の発注者も、このやさしいBIMガイドを参考に、BIMのメリットを生かしてみてはいかがでしょうか。