大林組、NEDO、慶応大が山岳トンネルの発破を遠隔化! 坑外から安全に火薬を装てん
2024年12月3日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事で特に危険なのは、「切羽(きりは)」と呼ばれる掘削最前面に開けた数多くの穴に、火薬を装てんする作業です。

これまでは土砂が崩れやすい中、作業員が手作業で火薬を穴に詰めていました。

従来の火薬装てん作業。防護用の仮設屋根の下で、作業員が手作業で火薬を詰めていく(以下の写真、資料:大林組、NEDO、慶応大学)

従来の火薬装てん作業。防護用の仮設屋根の下で、作業員が手作業で火薬を詰めていく(以下の写真、資料:大林組、NEDO、慶応大学)

この作業を安全に行うため、NEDOの「官民による若手研究者発掘支援事業」の一貫として、大林組と慶応義塾大学の野崎貴裕准教授らの研究グループは、「自動火薬装てんシステム」を開発しました。

そして2024年10月21日、大林組が施工するトンネル現場で、火薬の装てんを、

ナ、ナ、ナ、ナント、

トンネル外から遠隔操作

で実際に行い、発破する実証実験に成功したのです。(大林組、NEDO、慶応大学のプレスリリースはこちら

トンネル坑外で作業者がロボットアームを用いて火薬の装てん作業を行う(左)と、切羽のロボットがその動作通りに遠隔操作で火薬を詰めていく

トンネル坑外で作業者がロボットアームを用いて火薬の装てん作業を行う(左)と、切羽のロボットがその動作通りに遠隔操作で火薬を詰めていく

「自動火薬装てんシステム」による遠隔発破作業が成功した「令和4年度 三遠南信6号トンネル工事」の現場。左側とのトラック上には遠隔操作を行う作業者がいる

「自動火薬装てんシステム」による遠隔発破作業が成功した「令和4年度 三遠南信6号トンネル工事」の現場。左側とのトラック上には遠隔操作を行う作業者がいる

切羽に配置された削孔用のドリルジャンボ。真ん中のアーム先端に装薬用のロボットが搭載されている

切羽に配置された削孔用のドリルジャンボ。真ん中のアーム先端に装薬用のロボットが搭載されている

トンネルの切羽で火薬を装てんし、雷管に電線を取りつける作業には、繊細な力加減や手指の感覚が必要です。

そこで大林組と慶応大学は、切羽のロボットにかかる力を遠隔操作用のコントローラーにフィードバックし、作業者に火薬を装てんする時の力触覚を伝えられる「リアルハプティクス」という技術を応用した自動火薬装てんシステムを開発し、2023年9月に室内試験に成功しました。

今回は、その技術を搭載したロボットを、切羽で削孔を行うドリルジャンボのアームに搭載し、切羽から30m地点と320m離れたトンネル坑外から遠隔操作して、火薬の装てんと発破をおこなったものです。

このシステムは、紙巻きや粒状の火薬供給装置との連携が可能で、様々な火薬を使うことができます。今回の実証実験では、紙巻きの含水爆薬には熊谷組が開発した火薬供給装置と、粒状の含水火薬には粒状爆薬供給装置を使用しました。

様々な火薬供給装置と切羽の装てんロボットとの連携イメージ

様々な火薬供給装置と切羽の装てんロボットとの連携イメージ

リアルハプティクスは火薬用の穴の位置や力などの動作情報を記録、再現することが可能です。

今後はドリルジャンボで削孔した穴の位置データなどを使い、

火薬を自動装てん

する装置の開発も目指しているとのことです。

このシステムは、今日(2024年12月3日)から始まる土木学会「第34回トンネル工学研究発表会」や、2025年1月14日~16日に開催される岩の力学連合会「第16回岩の力学国内シンポジウム」で、大林組と慶応大学が発表する予定です。ご興味のある方は、お出掛けください。

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