管理人のイエイリです。
時代が移り変わるなか、多くの人々に愛された由緒ある建物も、時には惜しまれつつ、解体せざるを得ないこともよくあります。
東京・帝国ホテルにあった旧本館「ライト館」もその一つでした。巨匠、フランク・ロイド・ライトが設計し、1923(大正12年)に建設された建物ですが、老朽化などにより1968(昭和43)年に解体されました。
しかし今、ライト館の在りし日の姿を、再び見ることができるようになりました。2018年3月17日、愛知県犬山市にある博物館明治村に
ナ、ナ、ナ、ナント、
VRシアタールーム
が開設され、外観やロビー、ダイニングルームなどをVR(バーチャル・リアリティー。仮想現実)コンテンツとして、往時の建物全体を体感できるのです。(凸版印刷のプレスリリースはこちら)
このVR作品は凸版印刷が2017年9月から制作に取り組んでいるもので「帝国ホテル・ライト館」というものです。
旧本館について、早稲田大学建築学科の明石信道研究室による解体時の実測図面や、INAXライブミュージアムが所有する解体時の材料などに基づき、さらに当時を知る関係者から情報収集して、在りし日の姿をリアルに再現したものです。
建物は鉄筋コンクリート造で、中央棟を除き地上3階、地下1階で、270室もの客室を備えていました。デザインには大谷石(おおやいし)や愛知県常滑市で焼かれたスダレレンガやテラコッタなどの素材を生かしたのも特徴です。
VR作品にはこうしたデザインの、
ディテールや質感
そして、旧本館が使われていた当時の“躍動感”も加えて製作されました。
凸版印刷では今後も様々な記録写真や資料、関係者の証言などの取材を続け、旧本館の完全再現を目指すとのことです。
このように一度作ったVR作品は、維持補修の手間もほとんどかからず、貴重な建物と人の営みをずっと後世まで残すことができます。建物や土木構造物の新しい保存方法としても有効ですね。
こうした取り組みは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)時代の設計者や技術者の、新しい仕事としても有望ですね。