管理人のイエイリです。
2018年6月21日~23日、ニューヨークで開催されたAIA全米大会全米大会(AIA Conference on Architecture)では、建築物を写真計測で3Dモデル化するテクニックが注目を集めました。
日本の土木工事では、「i-Construction」の「ICT土工」などでドローンによる空撮写真から地形の3Dモデルを作る方法が普及していますが、それと同じ原理を使って建物の内部、外部を写真から3Dモデル化するための手法です。
「既存のビルを3D写真計測で記録する」(3D Photogrammetry to Document Existing Buildings)と題して講演したボールステート大学(Ball State University)のジョナサン・スポデック(Jonathan Spodek)教授と、CHデザインワークス(CH DesignWorks LLC)のデザイナー、クリストファー・ハリソン(Christopher Harrison)氏は、最終成果品を意識した“出口戦略”の具体的な方法について解説しました。
つまり、3DモデルやVR(仮想現実)作品、3Dプリンター出力などの最終成果品の製作に必要な精度やクオリティーを実現するため、使用するハードやソフト、計測精度などを、最初の段階から計画しておくことの大切さを説いたのです。
そこで彼らが使っているのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
写真計測チェックリスト
なのです。
このチェックリストは「計画」→「計測」→「3D化処理」→「データ加工」→「成果品出力」の工程順にまとめられており、それぞれ撮影方法や使用機材、使用ソフト、ハードなどがコンパクトにまとめられています。
これから写真計測を使って、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトに取り込むのか、VR作品を作るのか、それとも3Dプリンターで何かを作るのかといった目的をはっきりと意識したうえで、使用するハードやソフトを選ぶことで、手戻りや失敗を防ぐことができる貴重なチェックリストと言えます。
例えば、寺院(モスク)内部のVR作品を作り、ウェブサイトで公開するというプロジェクトの場合、チェックリストは次のようになります。
例えば、撮影方法は「Inside-Out(内側から外側に向かって撮影)」、撮影機材は「DSLR(一眼レフカメラ)とレンズ」、補助機材は「屋根上へのアクセス」、そして3D化処理ソフトは「ReCAP Photo」、編集は「MayaやPhotoshop」、そしてデータ出力にはゲーム開発ソフトの「Unity」などを使う計画です。
このチェックリストにしたがって撮影やデータ処理を行った結果、上記のような作品が無事、完成しました。VR作品は「Sketchfab」というVR作品共有サイトの「IDIA LAB(@idea-lab)」のコーナーに掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください。
また、歴史的建造物のテラコッタ粘土でできたブロックをBIMパーツ化したり、CNC(コンピューター数値制御)のルーターや3Dプリンターで複製したりしたときのチェックリストは次のようになります。
この例では、撮影方法は「Outside-In(外側から内側へ)」、撮影機材は「一眼レフカメラや三脚」、3D化やデータ処理はテクスチャーも含めて「.fbx」形式のデータで処理するため「ReMake」を使用し、そのデータを「Maya」や「Fusion 360」に引き継いで編集しています。
そして、BIMパーツ作成は「Revit」、最後のCNC加工では「RhinoCAM」や「CNCルーター」がチェックされています。
このプロジェクトでは、死角ができないようにブロックの上下をひっくり返して2セットに分けて撮影を行いました。
そして、2つの3Dモデルを同じ部分で切断し、
2つを1つに合体
させることで、死角のない3Dモデルを作ったのです。
このBIMモデルのデータは、「Sketchfab」というVR作品共有サイトの「Ball State HP Lab」のコーナーに掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください。
写真計測で建物などを3Dモデル化するとき、途中で1つのハードやソフト選択を誤ったりすると、もう一度、やり直しの手戻りが発生したり、要求に見合う精度や品質の成果品が作成できなかったりします。
こうしたチェックリストを自分の機材やソフトで作っておくと、効率的な作業が行えそうですね。