管理人のイエイリです。
国土交通省の直轄工事では、十数年前から3D設計データで建機を自動制御したり、出来形管理を行ったりする情報化施工が行われ、ここ数年はドローン(無人機)や3Dレーザースキャナーなどによる3D計測、そして3D設計ソフトで設計、施工を行うCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が順次、導入されてきました。
こうした取り組みは、平成28年度から始まる同省の「i-Construction(アイ・コンストラクション)」政策で有機的に連携され、さらにパワーアップすることになりました。
3月30日、国交省は「新たに導入する15の基準及び積算基準について」(PDF資料)というプレスリリースを、大臣官房技術調査課、総合政策局公共事業企画調整課、国土技術政策総合研究所、そして国土地理院が共同で出しました。
副題に「平成28 年度からi-Construction で建設現場が変わります!」とあるだけに、今年度から同省がドローンを使った測量やICT建機による土工を拡大していくことがうたわれています。
その中身を見てビックリ! というのは2ページ目の冒頭に、規模の大きい企業を対象とする土工工事では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ICT活用施工を標準化
すると書いてあったからです。
規模の小さい地域企業を対象とする工事でも、施工者が自発的に提案する「手上げ方式」を基本とするとあり、設計も「発注者指定方式」でICT土工に対応した3D設計を行っていくそうです。
大手建設会社にとっては、ICT土工の義務付けに近く、中小の建設会社ももはや従来の丁張りを使った施工からICT土工への移行は避けられない情勢になってきたと言っても、過言ではありません。
まず、公共測量では従来からの3Dレーザースキャナーに加えて、ドローン(UAV)を使った写真測量が加わります。そして公共測量の成果に詳細な3D点群データが追加されることになりました。これで、ICT土工用の設計を行うための詳細な現況地形データが測量段階で用意されることになりますね。
ICT建機で施工を行ったときの出来形管理基準も、従来は40mごとに「点と線」で行ってきた管理を、点群データと設計面を比較した平均値と最大誤差により「面」で管理されるようになりました。
そして、従来、40mごとの計測結果を1枚ずつ手入力で作成していた検査書類は、点群データの検査結果をまとめた1枚の書類だけでよくなりました。2km延長の道路現場などでは検査書類が50分の1に減ることになります。
国交省は3DデータによるICT土工を推進するため、紙図面を前提とした基準類を変更し、15の新基準を4月から導入します。
一方、施工者にとって心配なことの1つは、ICT建機のリース料が従来型建機に比べてかなり高いことでしょう。しかし、施工者の
皆さん、安心してください
というのは、土工や法面整形工について積算基準が改定され、ICT建機によって増えるリース料や、初期導入経費の項目が追加されたからです。
その結果、1万5000m3の路体や築堤の盛り土を行う場合、従来より1割程度、積算額が増えることになります。
今回、国交省が15にも及ぶ基準を改定し、i-Constructionの推進に向けて動き出したスピード感と、生産性向上に向けた姿勢には正直、驚きました。いよいよ、国交省はICT導入による建設業の生産性向上に「本気」を出し始めたと言えるでしょう。