管理人のイエイリです。
東京・千代田区の帝国ホテルには、あのフランク・ロイド・ライトが設計し、1923年に建設された旧本館、「ライト館」がありました。しかし、老朽化などの理由で1967年12月から解体され、今はその一部が愛知県犬山市の「博物館明治村」に移築されています。
ライト館は鉄筋コンクリート造で地上5階、地下1階建てで270室の客室を備えていました。時代の流れとともに、その全容を知る人は少なくなっています。
そこで凸版印刷は、開業から約10年後の昭和初期のライト館を
ナ、ナ、ナ、ナント、
VR技術で再現
した「帝国ホテル・ライト館の再現」という作品を制作中なのです。2018年3月の完成を目指しています。(VR:バーチャルリアリティー、仮想現実感)
上記のCGを見ると、明治村に保存されているライト館はごく一部にすぎず、ほかにも多くの建物からなっていたことがわかりますね。
VR化に当たっては、明治村の協力を得て、保存されているエントランスとロビーの一部を、高精細撮影と立体形状計測によってデジタル化しました。また、外観はドローンを使って空撮しました。
凸版印刷は、デジタルカメラの写真から高精度の3Dモデルを自動作成する技術を持っており、当ブログでも今年9月25日付けと、2014年6月19日付けの記事で紹介しました。きっとこうした技術もフルに使われているのでしょう。
また、
VR作品のテクスチャー
にもこだわっています。
そこでLIXILの協力を得て、同社の文化施設であるINAXライブミュージアムに保存されているライト館の解体材やスダレレンガ、大谷(おおや)石など当時の材料を調査しました。
このほか当時の写真や映像記録、測量写真などの資料も収集・検証し、往時の姿を再現しています。
ライト館解体当時には、早稲田大学建築学科、明石信道教授の研究室が実測し、約100枚の図面を残していました。これらの図面は早稲田大学中央図書館に保存されており、同図書館の協力を得て凸版印刷が開発した文化財専用のオルソスキャナーで高精細にデジタルアーカイブ化しました。
今年(2017年)は、ライトが1867年に生まれてから150年の記念すべき年です。9月29日には東京・自由学園明日館で、10月5には大阪工業大学梅田キャンパス常翔ホールで「フランク・ロイド・ライト生誕150年記念シンポジウム」が開催されます。
この記念シンポジウムでは、現在までに作成した外観やエントランス、ロビー、ダイニングルームのコンテンツを公開し、昼と夜の館内の印象変化やシミュレーションを行い、昭和初期のライト館を体験できるそうです。
VRには、各地に散らばっていた由緒ある建物や資料を一つにまとめて、リアルによみがえらせるという機能もあるようですね。