管理人のイエイリです。
山岳トンネルの工事で気をつけなければいけないのは、掘削最前線となる切り羽(掘削面)での岩石の落下や岩盤の崩落です。
これまでは切り羽付近にいる監視員が、崩落の予兆となるひび割れや小さな石の落下がないかを見張っていましたが、すべての予兆を目視でとらえるのは困難でした。
そこで大林組は岡山大学と共同研究を行い、切り羽崩落の予兆を瞬時に検知する「ロックフォールファインダー」を開発しました。
切り羽をビデオカメラで撮影し、切り羽の変化を画像認識によって検知する仕組みで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
直径10mmの石
がちょっと動いただけでも、0.5秒以内に検知できるのです。
このシステムは市販のビデオカメラとノートパソコン、警告灯など、ごく普通の機器で構成されています。
ビデオカメラで切り羽を撮影し、「背景差分法」と呼ばれる画像認識技術で、約0.1秒前の画像との比較を繰り返して切り羽の変化をとらえるものです。
このシステムは、タブレット端末による遠隔操作や監視もできるので、現場のどこからでも切り羽の状態を確認することができます。
人間の目では、「じわーっ」と動く変化は、なかなか見つけることができません。しかも、小さな石一つがちょっと動いたことを見分けられる人はほとんどいないでしょう。
それが、現場を画像データ化し、コンピューターに監視させることで見逃すことがなくなります。
また、切り羽の前を作業員や建機が横切ったり、カメラが振動したりしても画像は変化しますが、システムでは
これらの変化を対象外
として、切り羽の変化だけをとらえます。
さて、冒頭の画像で動いた小石はその後、切り羽から落下することがこのシステムによって検知されました。それから十数秒後、今度は大きな崩落が発生しました。
小石が動いたり、落下したりした時点で、警告灯やブザーで作業員に待避を促すことで、現場の安全管理はより確かなものになりますね。
大林組では、切り羽の画像から安全性を評価するAI(人工知能)の開発も進めています。トンネル内でも、人間とAIが一緒に働く光景が、近い将来に見られそうですね。