管理人のイエイリです。
今年の前半は、新型コロナウイルスの流行に伴う緊急事態宣言や3密の防止などで、建設業も現場での安全衛生管理の変革が求められたり、テレワークで業務を行ったりと、これまで想像していなかったような影響をもろに受けています。
そして、建設業は今後、どう変わっていくのかと不安な人や、逆に「これは建設業改革のチャンスになる」と期待している人など、様々でしょう。
アフターコロナの「ニューノーマル」時代に、建設業はどう変わるのかを大胆予測したのが、米国の大手経営コンサルタント、マッキンゼー(McKinsey & Company, Inc)です。
同社は2020年6月、「建設業の次の普通(原題:”The next normal in construction”)」という英文レポートを無料公開しました。
本編は全90ページ、抄訳版の「エグゼクティブ・サマリー」編でも13ページある力作です。取りあえず、後者の方を読んでみましたが、そのショッキングな内容にビックリ!
建設業の生産性が高まらない原因は現場での「一品生産」のワークフローにあり、これを改善するためには、「工業製品」のようなワークフローに変える必要があると指摘しています。
建物などの部材を工業製品のように標準化・モジュール化して工場生産し、計画的な生産・物流体制によって効率的なワークフローにする必要があるというわけです。
こうしたワークフローに変わることにより、付加価値が発生する部分は
ナ、ナ、ナ、ナント、
建設会社から工場へ
シフトするというのです。
つまり、ゼネコンやサブコンは今の業態のままだと「儲からなくなる」ということです。
コロナ前から、こうした動きの兆候がありました。建設市場では施主の要求が多様化して厳しくなり、現場では熟練労働者が少なくなってモジュール化した部材が使われるようになり、安全管理や環境面での基準も厳しくなる一方でした。
また、技術の進歩で工場生産が行いやすくなり、より軽量な部材の開発で物流が改善され、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などのデジタル技術によってより効率的な設計や施工、運用が行えるようになりました。
そして、建設業界以外からも、従来の建設業のビジネスモデルを破壊する参入者が登場しつつあります。
こうした背景から、未来の建設業を動かす9つの要素があると、同レポートは指摘しています。その内容は(1)工業製品的なアプローチ、(2)専門化、(3)サプライチェーンの統合と制御、(4)業界の統廃合、(5)顧客中心主義とブランド構築、(6)技術と設備への投資、(7)専門的人材への投資、(8)国際化、(9)持続可能性(サステナビリティー)です。
同社では、建設業の経営者に対し、コロナ後に建設業の変革が進むかどうかをヒアリングしました。その結果、
6割以上の回答者
が、「建設業の変革は加速する、非常に加速する」と答えたのです。
また、既にコロナ後の「ニューノーマル」に適用するための投資を増やしたという経営者も半数以上いました。
建築家にとって、ビルは1つひとつ違った形やデザインであるのが当たり前というのがこれまでの常識でした。
しかし、今後はビルのブランド化が進み、高級なハンドバッグや腕時計と同様に、施主のコンセプトに合わせてビルのブランドを選び、低価格・高品質の同じようなビルを建てる時代になるのかもしれません。
そして、建設業界はこれまで、「横並び」でいけば安心でしたが、これからは「自社はどの部分で付加価値を生むか」を真剣に考える必要もありそうです。
その部分の専門性を高め、差別化を図っていく時代になってきたのかもしれません。